研究課題/領域番号 |
17K03889
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
鳥邊 晋司 兵庫県立大学, 経営研究科, 教授 (00155607)
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研究分担者 |
藤江 哲也 兵庫県立大学, 経営研究科, 教授 (40305678)
木下 隆志 芦屋学園短期大学, 幼児教育学科, 教授 (10514606)
大夛賀 政昭 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (90619115)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 公的病院 / 財務情報 / 赤字病院 / 重要業績評価指標 / 医療の質 |
研究実績の概要 |
平成30年度の研究内容は,以下の2つである。 (1)入院基本管理料算定病院別の財務指標の検討と考察。 (2)政策医療を担う公的病院の業績評価に関する財務指標の整理と検討。 医療機関,とりわけ公的病院の評価指標の検討に向けて,理論的な検討を実施し,業績評価の実証分析に向けた準備を行った結果,病院機能,規模別に財務構造を把握するためのデータベースを完成させた。具体的に述べると,22年度から28年度の国立病院機構の財務諸表をマトリックスとして入力し,年度,病院機能,病床規模別に検討することが可能となった。そのため(1)の研究内容である,一般基本管理料算定病院ごとに,財務指標を比較検討し考察を行った(投稿論文)。また,(2)の政策医療(重症心身障害病床,精神疾患病床)を主とする病院機能ごとの抽出を行い,財務構造の特徴を抽出するための比較検討を進めている。 具体的には,売上高経常利益率の代理指標でもある経常収支比率を目標成果指標として,その改善に因果関係を有すると思われるKPI指標を取り上げ,それらの関係を実証的に解明する.重要業績評価指標の選択にあたっては,BSCの4つの視点,「財務的視点」「顧客の視点」「内部ビジネスプロセスの視点」「学習と成長の視点」に着目し,9つのKPIを選択し,従属変数を経常収支比率,説明変数を先のKPIとして重回帰分析を行う方法をとる。この方法により,公的病院の特徴を概観する。また,黒字・赤字別,病院機能,規模別に分析を進める。最終年度は現実妥当性を有する理論構築が必要とされるため,公表データが揃っている国立病院機構グループに対象を絞り検証を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の研究内容は,以下の点に集約される。 医療機関の業績評価に関する財務指標の整理と検討であり,医療機関,とりわけ国立病院の評価指標の検討に向けて,理論的な検討を積み重ねながら,業績評価の実証分析に向けたデータの整備を行った。 国立病院機構の公表データをデータベース化できたことにより,病院機能別,病院規模別に調査研究を進めている。得られた結果に対して,理論的な検討に際しては,医療分野の実務家,医療マネジメント研究者,さらには経営・会計分野の研究者の知見も得ながら,医療機関の評価をどのような視点からとらえることが適当であるかという点について,理論的な検討を行うとともに,具体の財務指標の内容について論点整理を行った。その検討時間に最も時間を費やしたのが,分析手法の検討である。従来の統計的分析を行うだけでは,財務構造の特性を導く公的病院の機能を説明するための仮説検証が不足することが予測されたため,KPIとBSCによる関連を用いることによって業績評価を可視化する結論にたどり着くまでに時間を要した。このBSCに対応するデータを算出するためには公表されている財務諸表データだけでは算定できないため,141病院のBSCに対応する職員配置人数,入退院数,紹介数などの機能データを調べ入力する時間を要する。そのため,若干遅れ気味ではあるが,所期の目的を達成する上で不可欠な作業であり,特段の支障にはならないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)今後は,上記データを用いて,重要な評価指標として取り上げられている分析指標に着目しながら,「国立病院機構」に焦点を絞り,財務データの視点から,規模,機能別に,単変量に基づく黒字・赤字病院間の評価判別指標を明らかにしていきたいと考えている。 (2)分類別の単変量から,さらには多変量分析,KPI指標との関係から黒字・赤字病院の財務構造について検討し,黒字・赤字病院間にどのような財務的特性が認められるかを明らかにしていきたいと考えている。 (3)そして,従来の経営分析で標榜されてきた財務分析指標に基づく評価と,医療機能に係る指標も組み入れた評価方法について,両者にどの程度の相互関連性が認められるかにも言及した上で,分析手法それ自体が抱える問題点や限界にも目を向け,検討を重ねていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
3万円程度残が生じたが,おおよそ予定通りの事業遂行に係る予算額を執行できたと考えている。当該金額は,次年度以降の物品費に充当したいと考えている。
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