研究課題/領域番号 |
17K03894
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
潜道 文子 拓殖大学, 商学部, 教授 (60277754)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ケアの倫理 / フロー体験 / meaningful work / ANT / 社会人基礎力 |
研究実績の概要 |
2019年度は、まず、ケアの倫理に基づいた従業員マネジメントについて、ミハイ・チクセントミハイのフロー理論を中心に、”meaningful work”に関する研究を行った。近年、経営学において、mindfulness、purpose、組織の心理的安全性など働く人々の人間としての側面に関わる研究が注目されている。その背景には、人生100年時代といわれる中、働く人々が自らの仕事を就社というよりキャリアとして考える傾向がでてきていること、人々の倫理度の向上により自らの倫理観や価値観に合う組織や仕事を選択していきたいという思いや意義ある仕事をしたいという思いが強くなってきていることが反映されていると考えられる。そして、現在、働き方改革が進む組織も増えているが、「仕事の意味づくり(sense making)」の視点が必要であり、その視点が労働をフロー体験に変換させ、さらには人生における幸福へとつながる可能性について論じた。 また、大学生のゼミナール・プロジェクトを事例とし、チーム内の心理的安全性の視点からの関係性構築と社会人基礎力(経済産業省が提唱した、職場や地域社会などで仕事をしていく上で重要となる基礎的な能力)の獲得、そしてフロー体験の関係性について考察した。 その他、日本企業に根付く利他主義やケアの倫理が生み出す多元的な価値創造活動によって生み出された当該企業の海外でのビジネスの成功、地域の課題解決、地域の企業や農家の仕事の成功という成果を事例として取り上げ、企業による新たなサステナビリティ型戦略モデルをアクターネットワーク理論(Actor-network-theory: ANT)の観点から分析を行った。 以上のように、関係性や互酬性を重視するケアの倫理を中心としたマネジメントに関し、Business for Society型ビジネスの意義について多元的視点から研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会報告を行い、その後、論文執筆に至っていない部分もあるが、今年度は、当初、予定してなかった「社会人基礎力」という新たな概念とフロー体験や関係性構築の組織に及ぼす影響のような倫理的側面との間の関係についての考察も行うことができ、Business for Society型ビジネスの意義について新たな側面からの考察を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、これまでの研究成果報告のため、学会報告や論文執筆を中心に研究を進める予定である。ただ、現在の新型コロナウィルスの影響で、応募していた国際学会などが中止となっており、執筆を中心に、Business for Society型ビジネスの意義とその可能性について成果を発表していきたい。 また、今回のコロナ禍を通じて、働く人々の価値観や組織の倫理観の変化などもみられると考えられる。その現状を踏まえて、ポスト・コロナにおけるケアの倫理や利他主義の重要性を中心としたビジネスと企業の存在意義について検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年3月に予定していた海外調査が、新型コロナウィルスの影響で実施することができなかったことから次年度使用額が生じた。 2020年度もウイルスの問題で海外調査は実施できない可能性があるが、2020年度秋以降に、国内調査を中心に調査を行うことと、可能であれば、国内を中心に学会報告等においても研究成果発表を積極的に行う予定である。
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