研究課題/領域番号 |
17K03894
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
潜道 文子 拓殖大学, 商学部, 教授 (60277754)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Business for Society / パーパス / オルタナティブなビジネス / 人間中心の価値観 / 働き方改革 / フロー体験 / ワーク・エンゲイジメント / well-being |
研究実績の概要 |
株主に対する受託者責任を果たすために、企業が利益の最大化を最も重要な目的とするという姿勢を問題視する声が大きくなっているが、本研究は、営利企業の目的は様々なステイクホルダーにとっての価値の創造であり、ビジネスは社会から求められる何かを成し遂げ、価値の創造を行っていくことを目的とすべきであるという立場(Business for Society: B4S)に立っている。 2020年度は、B4Sの価値観を有し人間中心の目的を重視する、スペインのモンドラゴン協同組合企業体についての研究を行ったが、2021年度もB4S型ビジネスの事例研究を行った。そのひとつが、「人々による人々のためのスーパーマーケット」という、明確なPurpose(パーパス)を有する、英国のThe People's Supermarket(TPS)である。本事例研究を通じて、ビジネスが果たすことのできる役割は多様であり、様々なステイクホルダーに向けて課題解決や価値創造が可能であることが示された。 さらに、2021年度は、働く人々という組織のステイクホルダーの視点からB4Sの研究を進めた。現在、日本では働き方改革が推進されているが、特にコロナ禍を通じて、働く人々にとっては、仕事をめぐる環境が大きく変化してきている。それと同時に、働く人々の倫理観や意識の変化もみられ、組織側もそれらに対応していく必要がある。申請時、本研究では、ミハイ・チクセントミハイ(Csikszentmihalyi, M.)が提唱したフロー理論を通じたB4Sの考察を計画しているが、2021年度の研究では、人々の働き方が変化する現在、労働時間の短縮などの量的な改善だけでなく、働く人々へ、「フロー体験」や「働きがい」のある仕事環境を提供するような質的改善が、働く人々および組織にとってどのような価値を創造するかを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際学会での報告なども予定していたが、2021年度もコロナ禍ということで、国内の学会報告や論文執筆などの形で研究成果の発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、引き続き、コロナ禍のなかで海外での学会報告などは実施できないかもしれないが、国内の学会報告および、論文執筆を中心に研究を推進していく予定である。 また、2022年度は、特に、フロー理論とケアの倫理との関係性、およびBusiness for Society型ビジネスのもたらす意義をさらに解明するために、社会学の理論等を通じて研究を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も、引き続きコロナ禍ということで、海外での学会報告の機会を得ることができなかったことから、次年度使用額が生じた。2022年度は、国内であれば調査や学会報告なども可能となってきたことから、そのような際の旅費・交通費、学会参加費などに使用したいと考えている。
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