研究課題/領域番号 |
17K03895
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
露木 恵美子 中央大学, 戦略経営, 教授 (10409534)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 場 / コミュニティ / 地域創生 / 起業 / 事業化 / アクションリサーチ / 桜えび漁業 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究では、地域コミュニティにおける事業化を支える基盤としての「場」および人的ネットワークの構築と再構築のプロセスの解明と、「場」と人的ネットワークに関する理論の精緻化を目的としている。 2017年度に実施した理論研究(場の理論の精緻化)と現地調査(フィールドワーク、アクションリサーチ)について以下に記述する。
理論研究:場の理論の精緻化については、「職場の現象学」というテーマを設定して東洋大学名誉教授の山口一郎先生と出版事業に取り組んでいる。特に現象学を応用した場の理論の精緻化とその職場への応用について、月1回のペースで対話を進めてきた。書籍の構成は第1部(理論)、第2部(事例)、第3部(事例の理論的解釈)の予定である。事例としては、桜えび漁業の事例、企業事例(㈱前川製作所における顧客との場の創造、巣鴨信用金庫におけるホスピタリティの実践、知的障害者施設こころみ学園における仕事と身体性等)を取り上げる予定である(出版は2018年度内を予定)。
フィールドワーク:フィールドワークとしては、由比港漁協の桜えび漁業の事例については、継続調査を行っている。また2017年度から広島県北広島町芸北地区の限界集落における高校生(広島県立加計高校芸北分校)によるリンゴ栽培と販売活動について、地域活性化の事例として取り上げ、アクションリサーチを行っている。具体的には高校生への起業教育(生産、販売等の計画づくり、目標設定、アウトカムの測定)と地域における事業化(地域創生)への取り組みのヒアリングを行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論研究においては、東洋大学名誉教授との月1回のミーティングならびに文献調査などを進め、理論研究の一つのアウトカムとしての書籍の出版のめどがついた(2018年度内に出版予定)。 フィールド調査については、由比港漁協の桜えび漁業の調査を継続しており、順調に推移している。地域活性化への取り組み(広島県北広島町芸北地区、加計高校芸北分校におけるりんごの生産と販売活動)への支援と調査も順調に推移し、芸北分校×CBSイノベーションプロジェクトを立ち上げ、2017年度には現地へ6回訪問し、調査と指導を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、代表研究者は1年間(2018年9月~2019年9月)の在外研究の機会を得て欧州にて研究を進める予定である。
フィールド調査については、具体的には、以前から交流のあるスイスのUniversity of St.Gallen(ドイツ語圏でもっとも有力なビジネススクールの一つ)のKMU-HSG:アントレプレナーシップ(起業家)およびSME(中小企業)研究センターと連携してリサーチサイトの探索や訪問を実施する。同研究センター教授であるUrs Fueglistaller教授や、Thomas Markus Zellweger教授らにコンタクトしている。ウィーン経済大学の研究者にもアクセスする予定である。主なリサーチサイトとしては、ドイツ語圏のコミュニティビジネスの実態調査、スタートアップの実態調査などを予定している。また、大企業内部の組織改革における場の創生、また大企業における起業支援やCSR活動なども視野に入れる予定である。
もう一つの柱は、場の理論の精緻化である。これはウィーン大学哲学部のGeorge Stenger(ゲオルグ・シュティンガー)教授との共同研究を予定している。Stenger教授は、西洋哲学(主にフッサールやメルロポンティなど)と日本ならびに東洋の哲学を基盤にしての場の理論の構築に可能性を感じており、在外研究では同大学の研究者との交流や授業への参加を通して、場の理論の基盤づくりと応用の可能性について学び、英語での論文発表を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は在外研究(オーストリア、ウィーン大学)の予定であり、当初は科研費にての旅費の使用が学内規定にて執行できないことになっていたが、学則改定にて一部執行可能(旅費と学会等参加費)が可能になっため、2018年度の執行額を積み増しした。
|