• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

地域における事業化を支える社会基盤としての「場」とネットワークの研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K03895
研究機関中央大学

研究代表者

露木 恵美子  中央大学, 戦略経営研究科, 教授 (10409534)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード場 / ネットワーク / 地域コミュニティ / 現象学 / 事業化 / 桜えび漁 / スタートアップ / 企業文化
研究実績の概要

本研究は、地域コミュニティにおける事業化について、その事業化を支える基盤としての地域における「場」および人的ネットワークに着目し、地域ビジネスの成功要因を探索すると同時に、その事業化によって地域の「場」やネットワークがどのように構築(再構築)されるかを解明することが目的である。
2019度は、本研究の第1の課題である、事業化に際しての地域内と地域間の「場」と人的ネットワーク構造の解明(日本・欧州)を、①駿河湾の桜えび漁、②欧州(ウィーンに拠点をもつ)におけるスタートアップ企業、グローバル企業を対象に実施した。
①桜えび漁については、自然環境の劇的な変化ととりすぎによる資源量の減少が著しく、そのような危機に際して漁業者と地元加工・仲買業者との関係が変わってきており、その変化がコミュニティビジネスの構造を変えつつある。現在はその過渡期であると思われる。
②ヨーロッパにおけるスタートアップシーンは、主に2000年代に始まった公的支援によるスタートアップの創業が、その後ドイツや北欧で発展的に展開され、主にICTを活用したスタートアップが多数生まれ、それがドイツのベルリンなどに集積している。オーストリアウィーンは、比較的治安がよく物価も他の欧州大都市より安く住みやすい都市であるという利点があり、またドイツ語圏のため英語が準公用語として通じる、ウィーン国際空港が至近という利便性も高いため、資金力の乏しいスタートアップでもビジネス展開しやすい環境にある。そこでのスタートアップの活動は、欧州域内にとどまらず、日米欧を中心としたグローバル展開(ボーングローバル)であることが確認された。
第3の課題である、場の理論の精緻化と一般化については、ウィーン大学哲学部の客員教授フェローとして在籍しながら、同大学のゲオルグ・ステンガー教授との共同研究を行い学会発表および書籍の出版を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

具体的な事例に関するフィールドワークは、駿河湾の桜えび漁の漁業者コミュニティにおける場の生成と発展に関する現地調査を継続した。
令和元年の桜えび漁は、これまでで最低の水揚げ量であった。また、資源の枯渇が懸念されるなかで、自ら漁における規制を設けたことで秋漁については1回も出漁できない状況に陥った。このような漁業資源の枯渇問題に直面する中で、今までにはない漁業者と地元加工業者との話合いの場がもたれ、漁協の幹部の中にも科学的な資源管理とその方法を真剣に議論する場が生まれた。この危機的状況に対峙する過程で、地域の関係性がかわり新しいネットワーク(弱い紐帯)が生まれた背景には、漁協青年部による桜えび加工品の商材開発や、その時に生まれた漁業後継者の新たなつながり(強い紐帯)があることが分かった。
研究成果の発表は、2019年6月にイタリアフィレンツェで開催されたISPIMにて、学会報告(発表テーマ:Collective Creativity : How People with Intellectual Disabilities Work ?)を行った。また、2020年3月に、これまでの研究成果をまとめた『職場の現象学』(共著者:山口一郎、白桃書房)を刊行した。
欧州においては、ウィーンに拠点をもつスタートアップ企業を複数訪問し、欧州おけるスタートアップシーン、その国際的(日米欧)展開をヒアリング調査した。また、欧州に拠点をもつグローバル企業のアライアンス戦略において、企業文化の統合プロセスと「場」が密接に関係していることが明らかになった。
理論の精緻化は、ウィーン大学哲学部の研究フェローとして在籍しながら、同大学哲学部副学部長で間文化哲学の権威であるのゲオルグ・ステーンガー教授と共同研究(Ba and Network in a community business)を行った。

今後の研究の推進方策

令和2年3月に、研究成果の発表と一般啓発を行うために、ウィーン大学にて公開講座を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で渡欧がかなわなくなったため、研究成果を公開するホームページを作成し、研究活動の社会への還元を目的に、オンランイベント(研究発表と討論の場)を実施する予定である。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の蔓延により、2019年2月末に予定していた研究発表講演会を中止にせざるを得なくなり、そのための費用、約10万円が未使用となった。5月現在まで、研究発表講演会の目途は立っておらず(対面での講演会は難しい)、そのために研究成果発表、普及啓発のためのホームページを作成することにした。
https://ba-phenomenology.com/
これに関連して、2020年度4月18日、5月17日の2回にわたってオンライン研究発表講演会を企画(実施)しており、今後もホームーページやオンラインメディアを使って、研究成果の一般啓発活動に注力していく予定である。

備考

Research Theme : Ba(place and field) and Network in a community business.
Objective: This project is aimed to formulate the model of "Ba" for collective creativity in an organization and community.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] University of Vienna(オーストリア)

    • 国名
      オーストリア
    • 外国機関名
      University of Vienna
  • [雑誌論文] 場と知識創造─現象学的アプローチによる集団的創造性を促す「場」の理論に構築に向けて」2019

    • 著者名/発表者名
      露木恵美子
    • 雑誌名

      研究技術計画

      巻: Vol.34 No.1 ページ: pp.39-57

    • オープンアクセス
  • [学会発表] Collective Creativity : How People with Intellectual Disabilities Work ?2019

    • 著者名/発表者名
      Emiko Tsuyuki
    • 学会等名
      ISPIM(The International Society for Professional Innovation Management)
    • 国際学会
  • [図書] 職場の現象学2020

    • 著者名/発表者名
      露木恵美子・山口一郎
    • 総ページ数
      346
    • 出版者
      白桃書房

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi