研究課題/領域番号 |
17K03897
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
堀内 恵 中央大学, 商学部, 教授 (20338651)
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研究分担者 |
清水 智 山梨学院大学, 経営情報学部, 教授 (90162700)
安積 淳 拓殖大学, 商学部, 准教授 (10348302)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ブロックチェーン / 取引処理システム / スマートコントラクト / REAオントロジー / ビジネス取引のステートマシン |
研究実績の概要 |
本年度は、デザイン・サインスの研究フレームワーク(Hevner & Chatterjee, 2010)に沿って、REAオントロジーを用いる取引処理システムとブロックチェーン技術の補完的利用の可能性について下記の研究活動を進めた。 ①ブロックチェーン技術を用いる取引処理の特性に関する文献調査と実践事例の調査、およびコンピュータ上で稼働するプロトタイプシステムの構築に向けての技術調査を行った。 ②中央大学企業研究所主催の公開研究会において、当該研究分野における第一人者である二人の研究者を招聘して研究会を開催した。一人目の岡田仁志准教授(国立情報学研究所)には、「状態マシンとしてのブロックチェーンの構造と応用」というテーマで報告してもらい、ブロックチェーン技術の最新動向とステートマシンへの適用可能性についての理解を深めた。二人目の研究協力者であるベルギー国のサンルイ大学のWim Laurier准教授には、「Applied Enterprise Ontology」というテーマで報告してもらうとともに、ブロックチェーン技術を用いる取引の定義(スマートコントラクを用いる)について集中的なワークショップを開催した。 ③ブロックチェーン技術を用いる交換は、これまでの取引システムの情報化に大いなる示唆を与えている優れた理論と考え方を手掛かりにどのように設計および記録できるのかについて、一部実験例を取り上げつつ具体的に考察した。この成果は日本情報経営学会の全国大会で報告した。 ④金やダイヤモンドといった転々流通する資産と仮想通貨との交換におけるブロックチェーン技術を用いる記録の在り方および資産の真正性を担保する識別子(ID)の在り方について検討・考察を行った。この成果は、日本情報経営学会関東支部と中央大学共同研究プロジェクトとの主催の国際シンポジウムで報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、情報収集として、文献・資料、ウェブサイトなどからのブロックチェーン技術の特性、その上で機能するプログラム技術(スマートコントラクト)の特性、およびブロックチェーン技術を用いる取引処理システムへの実践例等の様々な有益な情報収集ができた。特筆すべき点は、REAオントロジーとBC技術を組み合わせるビジネス展開の事例について調査することができた点およびREAオントロジーに基づく北米と欧州の研究者集団が研究会でブロックチェーン技術を用いる取引処理システムの構築に向けて研究活動を本格的に開始し始めていることを確認することができた(研究会での報告資料を入手)点を指摘できる。 第一世代のBitcoinに基づくブロックチェーンと第二世代のEthereumやHyperLedgerFabricに基づくブロックチェーンを利用した取引処理における交換概念の基礎づけ、および仮想通貨とデジタル情報としての商品の交換における真正性保証に関する根本的課題を探究した。この交換の理解に基づいて、ブロックチェーン上で機能するプログラムであるスマートコントラクトを設計する基礎が整った。 さらに、転々流通する資産と仮想通貨との交換におけるブロックチェーンでの記録の在り方、および資産の真正性を担保する識別子(ID)の在り方についての理解を深めた。 しかしながら、より実践的な取引処理システム構築のための要件定義を検討するための考察は十分には行えなかった。今後は、ブロックチェーン技術を用いてビジネス展開している企業に訪問調査を行うことで、現実の取引処理システムの特徴を明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、デザイン・サインスの研究フレームワークの第2段階として、REAを用いる取引処理システムとブロックチェーン技術の補完的利用の可能性を実証するために、コンピュータ上で稼働するプロトタイプシステムの構築と評価を繰り返す予定である。なお、この研究活動を進めるにあたっては、公開する情報を制限できる機能を備えていること、クラスライブラリを容易に扱えること、オブジェクト指向の考え方をスマートコントラクトの定義において反映できる第2世代のブロックチェーンを用いる。 また、昨年度と同様に、この分野を代表する研究者を招聘して研究会を開催することによりブロックチェーンの最新動向についての理解を深める。 さらに、ブロックチェーン技術を用いてビジネス展開している企業に訪問調査を行うことで、現実の取引処理システムの特徴を明らかにする。 以上の研究活動の成果を適宜学会や研究会で報告することにより、研究を深耕させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定した国際学会への参加計画が次年度以降に遅延したため。
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