研究課題/領域番号 |
17K03898
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
佐々木 隆文 中央大学, 総合政策学部, 教授 (10453078)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 退職給付 / 退職給付債務 / 企業の社会的責任 / 株式の資本コスト |
研究実績の概要 |
今年度は,退職給付債務と株式資本コストに関する研究について,実証分析方法の改善を進めた.株式の資本コストの代理変数としては,近年のファイナンス,会計分野の実証研究でよく用いられているGebhardt et al. (2001),Claus and Thomas (2001),Ohlson and Juettner-Nauroth (2005),Easton (2004)の4つのモデルを用いている(以下,GLS,CT,OJ,EAと表記).しかしながら,この4つのモデルによって算出された資本コスト間の相関係数は必ずしも高くない.これらの4つのモデルについて,その構成要素との相関を見たところ,OJ,EAは2年後のEPS成長率予想との相関係数が極めて高いことが分かった.このことも踏まえ,ファイナンス分野でよく用いられているGLSモデルのみを用いた分析,4つのモデルの平均値を用いた分析の両方を行ったが,どちらのケースでも概ね本研究の仮説を支持する傾向が見られた.また,サンプル数の制約が少ないGLS,EAの2つのモデルを用いた検証も行い,上記の傾向を確認した.このような分析結果を反映する形で論文を推敲した. また,退職給付制度と企業の社会的責任(CSR)との関係に関する分析も進めている.充実した確定給付型の退職給付制度を持つ企業では長期雇用が促され,人材への投資が行いやすくなる.とりわけ,男女均等,ワークライフバランスの推進といった日本企業にとって重要な課題である対従業員CSRについては,予想される金属年数が重要な影響を及ぼすと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各モデルで算出された資本コストをどのように組み合わせて使うかを検証するために予想以上の時間を費やしてしまった.表に出ない地道な作業ではあったが,実証分析の信頼性を高めるために必要なプロセスだったと思う.
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今後の研究の推進方策 |
今後は退職給付債務と資本コストに関する論文を公刊するための努力を行うとともに,退職給付制度が男女均等,ワークライフバランスに及ぼす影響を検証し論文にまとめる.近年,ファイナンス分野でも男女均等の効果に関する研究が盛んになってきているが,男女均等の要因に関する研究は少ない.このため,本研究はCSR企業研究のみでなく,ファイナンス分野においても一定の貢献が期待される研究になると思われる.
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次年度使用額が生じた理由 |
利益予想データを含むデータベース購入を2019年度から2020年度へと変更したため
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