研究課題/領域番号 |
17K03901
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
高見 茂雄 立正大学, 経営学部, 教授 (50345550)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本型財務保守主義 / ゼロレバレッジ / 財務保守主義からの脱却 / 過去の長期借入実績 / 資金需要に関する感度 |
研究実績の概要 |
本件研究課題「日本型財務保守主義の実態と企業価値に与える影響」においては,[1]資金提供者との関係,[2]投資抑制効果,[3]キャッシュフロー計算書データの解析,[4]日本型財務保守主義の評価の4つの研究テーマを段階ごとに進めて行く計画にあるが,29年度と30年度においては[1]に注力した。29年度においては企業の資金調達における株主との関係を研究したが,30年度では銀行との関係,すなわち過去の長期借入増加実績が時期の資金調達行動や資金需要の感度にいかなる影響を与えるかを調べた。積極的な資金調達活動や資金需要に敏感に反応することは,財務保守主義からの脱却とみなすことができるので,その観点で研究した。 得られた結論は,過去の資金調達手段のうち長期借入実行のみが,次期の投資機会に敏感に反応し,さらなる長期借入を引き起こすというものである。日本企業は先行研究が想定した財務保守主義行動とは異なり,銀行との取引関係を深めることで経常的な資金需要に敏感になる素地があると示唆している。分析過程においては,資金調達手段とキャッシュフローの間の内生性の問題に対処すべき,2段階最小二乗法を用い,十分な注意を払った。その過程で用いたコントロール変数は今後の分析に役立てることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の4つ課題のうちは[1]資金提供者との関係においては,一通りの成果を上げてきたと考えるが,[2]投資抑制効果をはじめとする残りの課題は,データ収集は始めてはいるものの,試行錯誤の段階にある。東洋経済新報社から,設備投資額予測額と実績額の6年分のデータベースを取得したが,会社四季報でデータを補記することや,有価証券報告書でデータ確認することなど,データ整備に時間がかかっており,分析まで至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は東洋経済新報社の設備投資データを活用し,企業はいかなる要因から,設備投資予測額を下方修正することなるのか分析を行う予定である。4つの課題のうち[3]キャッシュフロー計算書データの解析も加えて分析を行うが,後者データは実績額から企業行動を読み取ることしかできず限界がある。そのため設備投資予測額と実績額との乖離を見ることは,貴重な分析機会を提供しているといえる。さまざまな分析手法がありうると思われるが,まずはデータ整備から固める。
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次年度使用額が生じた理由 |
おもに学会発表などで消費する旅費見込みを使わなかったため
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