本件研究課題「日本型財務保守主義と企業価値に与える影響」において、[1]資金提供者との関係、[2]投資抑制効果、[3]キャッシュフロー計算書データの解析、[4]日本型財務保守主義の評価の4つの研究テーマを段階ごとに進めて行く計画にある。 このうち30年度までは、[1]に注力し、新株発行においては、資本構成を変えないことそのものが財務保守主義の現れととらえ、社齢の古い保守的な企業は新株発行に抑制的であることを明らかにした。また、長期銀行借入金については、借入金を増加・維持することは、表面的には財務積極的に見えるが、むしろ銀行との取引関係を維持しようという財務保守主義ととらえられることを明らかにした。 令和元年度は[2]投資抑制効果に注力した。財務保守主義は設備投資計画段階と実施段階にいかに働くか、2段階の因果関係を調べた。その結果、財務保守的な企業は、設備投資計画を前例踏襲的に決める傾向にあり、環境変化が起きても、あまり計画修正を行わないことが示唆された。 令和2年度は、[3]とともに、4年間の本件研究をまとめる[4]日本型財務保守主義の評価に取り組む計画であったが、新型コロナウイルスの影響で、大学生活の大部分がオンライン授業の準備と運営に費やされ、研究資料の収集や分析に割ける時間がとれなかった。そのため、遺憾ながら、研究は令和元年度の状況から進んでいない。
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