研究課題/領域番号 |
17K03907
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竇 少杰 立命館大学, 経営学部, 助教 (30600556)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 家族企業 / 事業承継 / 後継者 / 家族経営 / 企業経営 / 財産経営 / 老舗 / 国際比較 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本、中国大陸と台湾の家族企業に対してヒアリング調査を行い、急激に進んでいる経済のグローバル化と世界経済の継続的な低迷のなか、それぞれの国(地域)の家族企業の事業承継問題のあり方と特徴を把握し、それを取り巻く社会的環境を踏まえつつ、国際比較研究を通じて日本、中国大陸と台湾の家族企業の事業承継問題の全体像を解明することである。 平成30年度は本研究の2年目であった。日本国内において老舗家族企業7社に対して調査を行い、日本の老舗家族企業の伝統とイノベーションのあり方を探った。調査の内容は主に「企業経営」、「家族経営」と「財産経営」、この3つの側面であった。中国大陸の調査について、夏季休暇期間を利用して中国の上海市と浙江省にある家族企業3社に対してヒアリング調査を実施し、改革開放以降の中国大陸で生まれてきた家族企業の状況と事業承継のあり方について初段階に把握した。また台湾調査について、昨年8月、台湾の台中市で開催される台湾東海大学東亜社会経済研究センターの台日家族企業事業承継フォーラムに参加し、多くの台湾家族企業の経営者と出会えた。 日本、中国大陸と台湾とは別に、昨年は韓国へ行き、韓国中小企業同盟会・韓国中小企業学会にも参加でき、ソウル市内にある韓国の家族企業2社に対して企業経営、家族経営と財産経営に関するヒアリング調査も実施できた。そして香港でも家族企業2社に対してヒアリング調査ができた。 韓国や香港の家族企業と比較しながら研究を推進することは、日本、中国大陸と台湾の家族企業の特徴を明らかにすることにとって非常に有益だと理解している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の調査研究は以下の理由でほぼ計画した通りで実施できたと言える。 まず、日本国内の調査研究について。老舗家族企業7社に対して、企業経営、家族経営と財産経営の3つの側面から緻密なヒアリング調査を実施し、日本の家族企業を取り巻く社会環境と経済環境をより具体的に把握することができた。特に永続経営を実現している老舗企業には、本業・家訓や経営理念などを守りながら、常にイノベーションを実施し、自らの強みを巡りながら様々な側面において積極的にチャレンジしているという姿ははっきりと見えてきた。また、文化的には、住職一致や、養子文化、襲名文化など、事業承継における非常に重要な文化的要因も解明できた。 次に、中国大陸における調査研究について。大学との協力関係については、昨年度、中国の上海にある中欧工商学院との連携ができた。そして浙江大学企業家学院や寧波家業長青接班人学院との連携も継続できている。昨年度末に、寧波家業長青接班人学院の年末フォーラムにて、講演も実施できた。また、家族企業3社へのヒアリング調査もできた。 最後に、台湾における調査研究について。昨年8月に、台中市の東海大学へ出張し、「日中家族企業事業承継研討会」に参加し、講演も行なった。また韓国や香港の家族企業に対するヒアリング調査もできた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き研究目的の実現を目指しながら、研究計画を沿って、日本・中国大陸・台湾の家族企業の事業承継問題について調査研究を遂行していこうと考えている。 まず、日本国内での家族企業調査研究について。京都市にある「京都老舗の会」、大阪にある「大阪府中小企業家同友会」、そして東京にある「東都のれん会」の協力を得て、日本全国で家族企業の事業承継に関する本格的なヒアリング調査を推進したい。 次に、中国大陸での家族企業調査研究について。昨年は主に上海市と浙江省の家族企業に対してヒアリング調査を実施できたが、今年度はこれまでの調査対象企業への連絡と調査研究を深めつつ、中国の遼寧省、北京、そして深セン、広東省にある家族企業に対して本格的なヒアリング調査を実現していきたい。 また台湾での家族企業調査研究について。台湾では台北市と台中市の2地域において引き続き調査研究をさらに深めていきたい。これまで連携関係ができた東海大学東亜社会経済研究センターと台湾董事学会、台湾老舗協会から協力を得ながら、台湾での家族企業の事業承継に関する調査研究を深めていきたい。
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