2022年度は本研究の最終年度であった。 本研究の研究目的は、日本、中国大陸と台湾の家族企業に対してヒアリング調査を行い、中国大陸や台湾と比較研究を通じて日本の老舗家族企業の企業経営と家族経営における特徴を探り、社会学と経営学、この二つの視点から日本になぜこれほど多くの老舗家族企業が存在するのか、その理由を解明することであった。近年、中国でも台湾でも事業承継問題がクローズアップされるなかで“成功モデル”としての日本企業(なかでも特に老舗企業)の経営理念や人材育成方法に対する関心が大いに高まっている。この点に関して、本研究は、中国語を用いた研究成果の発信を積極的に行なうことにより、中国大陸・台湾での社会的需要に応えるとともに、当該領域におけるさらなる国際学術交流を促進しようとする試みであった。また、ますます厳しくなってきている世界経済環境と日本国内の経営環境にも留意しつつ構造的に明らかにすると同時に、中国大陸・台湾の事例との比較検討を通して、日本の当該問題へのいっそう客観的かつリフレクティブな見方を提示することもできると考えた。 コロナ禍の影響を受け、本研究は2回の期間延長を実施した。研究期間において、研究代表者は日本国内、中国大陸と台湾において、現地の研究協力者の協力を得ながら、多くの家族企業(日本15社、中国大陸8社、台湾4社)に対してインタビュー調査を実施できた。また日本国内、中国大陸と台湾で、フォーラムや学会で全27回の講演・発表を行い、それに伴い、日本語著書(共著)全4部、日本語論文全6本、英語著書(共著)1部、中国語論文42本を出版・発表できた。とくにコロナ禍の中において、コロナ禍における日本や中国の家族企業の奮闘に関する研究実績や共著『東アジアの家族企業と事業承継』の出版などは、本研究を整理・まとめることができたと思われる。
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