研究課題/領域番号 |
17K03921
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
辺 成祐 近畿大学, 経営学部, 准教授 (40737467)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 工程間調整 / 組織間調整 / 調整能力 / プロセス産業 / 鉄鋼産業 / 一貫品質管理 |
研究実績の概要 |
研究5年目の2021年度は、これまでの文献・資料の収集、企業OBを含めたヒアリング調査を踏まえて研究課題に答えるため、より深い資料収集、ヒアリング調査を行った。しかし、企業の生産現場などを対象とする実地調査については、新型コロナウイルス感染症の影響で延期またはキャンセルになるケースが発生した。そのため研究期間の延長申請を行った。 企業の生産現場、事業所等の実地調査を、鉄鋼メーカー2回、自動車メーカー2回、電機メーカー1回、ゴムメーカー1回、フィルターメーカー2回、食品メーカー1回行った。これに加えて、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて、ZOOMなど遠隔ウェブ会議サービスを利用したヒアリング調査を、鉄鋼メーカーのエンジニア1回、自動車メーカーのOB1回、鉄鋼産業研究者2回行った。さらに、以上の資料収集、実地調査、オンライン・ヒアリング調査の知見を研究成果としてまとめつつ、調査成果の発信を国内外の学会で積極的に行った。具体的な成果としては、雑誌論文2本、プロシーディング2本、英文学術書1冊(分担)、経営学テキスト1冊(分担)、学会報告7回(国際学会報告2回)を行った。 2021年度は、新型コロナウイルス感染症の影響があったものの、一定の成果が得られた。特に本研究の第3の課題である「工程間、組織間の調整能力と生産現場のパフォーマンスの対応関係」を、鉄鋼産業を中心に明らかにすることができた。具体的には、自動車用鋼板などの高級鋼を生産する際に、前工程の作業結果に合わせて後工程で行われる微細な調整が最終製品の品質に与える影響について詳細に分析できた。また、工程間調整を必要とする技術要因と、工程間連携といった組織要因を同時に分析する必要があることも明らかになった。これらの成果を踏まえて、延長申請した2022年度には、他のプロセス産業現場に対する訪問調査とヒアリング調査を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、企業の生産現場、事業所等の実地調査の予定に遅れが発生している。特に、当初予定していた、海外から技術を導入した新興国企業の製造拠点に対する調査を行うことができなかった。国内企業の生産現場、事業所等の実地調査についても、一部の調査を除いて延期またはキャンセルになるケースが発生した。そのため、素材メーカーであるゴムメーカー、フィルターメーカーの生産現場に対する調査を追加で行った。延長期間である2022年にさらに体系的な研究を行う予定である。 第一点目に、当初計画していた実地調査は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で延期またはキャンセルになったが、ZOOMなど遠隔ウェブ会議サービスを利用したヒアリング調査で一部補うことができた。特に、本研究の第3の課題である「工程間、組織間の調整能力と生産現場のパフォーマンスの対応関係」についてまとめた研究成果を、企業のエンジニア、研究者と意見交換をする機会をオンライン上でつくることで、概念の整理、用語の統一、さらには図表の修正など、フォローアップ調査を行うことができた。 第二点目に、第3の課題について、工程間調整を必要とする技術要因と、工程間連携といった組織要因を同時に分析する必要があることも明らかになった。例えば、自動車用鋼板を生産する際に、前工程の作業結果に合わせて後工程で行われる微細な調整が最終製品の品質に与える影響を技術側面から分析しつつ、実際に各工程組織間においてのコミュニケーションなどを通じた情報共有活動を、組織面から分析する必要があることを明らかにした。これについての知見には、国内、国際学会での発表での討論およびコメントも反映している。
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今後の研究の推進方策 |
延長申請した2022年度(研究6年目)には、これまでの研究成果をまとめる作業を進める同時に、本研究の第3課題に関する成果を、鉄鋼産業だけではなく、他のプロセス産業にも適用する。そのために、他のプロセス産業現場に対する訪問調査とヒアリング調査を行う。 具体的には、工程間調整を必要とする技術要因と、工程間連携といった組織要因をフレームワークでまとめ、鉄鋼メーカーの役員、エンジニアと意見交換し、フォローアップ調査を行う。また、このフレームワークを、他のプロセス産業、化学産業、醸造産業、製紙産業にも適用できるかを中心に調べる。 その際に、本研究の学術的背景を意識しながら研究を進める。つまり、既存研究において、調整負荷と組織の調整能力とのアンバランスを解消していくプロセスに対する検討が十分とは言えない。前者の調整負荷の部分は技術要因として理解できる。一方、後者の組織の調整能力の構築は、組織要因として捉えることができる。この視点から、第3課題だけではなく、第1課題(工程間調整、組織間調整の実態を明らかにすること)と第2課題(工程間、組織間調整能力を構築していくプロセスを明らかにすること)も含めて、総まとめする。 新型コロナウイルス感染症の影響で、2022年度にも実地調査(特に海外企業の訪問調査)を積極的に行うことに困難が予想される。海外渡航の状況を見極めながら、遠隔ウェブ会議サービスによる事前調査を入れることなどの工夫を通じて、研究成果をまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で企業訪問調査などの実地調査が延期あるいはキャンセルになるケースが発生した。延長申請した2022年度(研究6年目)には、海外企業の訪問調査を含む実地調査件数を入れて、当初計画した予算を使い切る予定である。 2022年度には、これまでの研究成果をまとめる作業を進める同時に、本研究の第3課題に関する成果を、鉄鋼産業だけではなく、他のプロセス産業にも適用する。そのために、他のプロセス産業現場に対する訪問調査とヒアリング調査を行う。 具体的には、工程間調整を必要とする技術要因と、工程間連携といった組織要因をフレームワークでまとめ、鉄鋼メーカーの役員、エンジニアと意見交換し、フォローアップ調査を行う。また、このフレームワークを、他のプロセス産業、化学産業、醸造産業、製紙産業にも適用できるかを中心に調べる。
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