最終年度の令和2年度は、これまでの研究を継続しながら、成果をとりまとめる作業を行った。新型コロナ感染症の影響によって、当初の研究計画の変更を余儀なくされ、企業を対象とした質問票調査の実施を見送り、代わりにデータベースの整備を加えるとともに聞き取り調査を行なった。①文献レビュー、②人事部門の地位に関するデータベースの整備、③人事機能に関するデータベースの構築、④人事部門の地位・組織・機能に関する聞き取り調査を行った。 ①文献レビュー:人事部門と組織構造の関係について欧米の研究を中心に文献レビューを行ない、組織再編における人事部門の役割や人事機能との関連についての知見を整理した。 ②人事部門の地位に関するデータベースの整備:日本の上場企業を対象とした1990~2018年の取締役のデータベースを2020年まで拡張するとともに、当該企業の産業・組織特性や雇用慣行に関するデータを加えてデータベースを拡充した。 ③人事部門の人事機能に関するデータベースの構築:CSRデータを用いて日本の上場企業の人事機能に関するデータを整備し、人事部門と組織構造、人事機能に関するデータベースの構築を進めた。 ④人事部門の地位・組織・機能に関する聞き取り調査:人事部門の組織構造の変化、人事機能のアウトソーシングなどに関して人事部門に聞き取り調査を行ない、過去の調査結果に照らして検討を行った。 本研究期間を通じて、人事部門の企業内地位に関する概念や測定を整理するとともに、企業内地位と人事機能に関する欧米研究の知見を整理することができた。これをもとに、日本企業が過去30年間に企業内での相対的地位を低下していることや、日本企業においても人事部門の企業内地位と雇用慣行に関連があることについて、質問票調査のデータやアーカイバルデータを用いて確認することができた。
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