少子高齢化の本格的な進展なかで要介護者の増加が続いており、老親介護に直面する労働者が拡大している。この問題では当初より「介護離職」が注目されてきたが、実態的には離職者よりも離職せず勤務しながら仕事との両立する者が圧倒的に多い。ここで、懸念されるのが、両立による業務上のパフォーマンスの低下、すなわち労働生産性損失の発生である。本研究では、この損失の実態を健康経営で蓄積されてきた知見を応用して測定すると同時に、その損失をもたらす要因を明らかにした。 老親介護との両立に直面している介護者としての労働者の生産性損失について、その実態と要因を探ったわけだが、QQmethod方式、WFun方式いずれの方式であっても、一定のプレゼンティーズム損失が発生していることが明らかとなった。年収ベースとして主観的判断での測定ではあるが、彼らの生産性が介護との両立時に毀損している可能性が確認された。また、その主観的判断をもたらす要因もいくつかの首肯できる要因が特定できた。 これから長く多くの労働者が介護との両立に直面する伴い、労働生産性が大きく低下するとなれば企業にとっては大きな経営リスクとなることは間違いないだろう。企業として、どのような支援が生産性低下を抑制できるか、新たな課題といえるだろう。
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