研究課題/領域番号 |
17K03927
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
安保 哲夫 神戸大学, 経済経営研究所, リサーチフェロー (90013028)
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研究分担者 |
佐藤 隆広 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (60320272)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本企業の内外工場訪問 / 大手自動車メーカーの東北進出 / 日系工場の「再訪問」 / 生産システム移転の「ハイブリッドモデル」 / 日系現地子会社の現状と変化 / 内外関連研究機関との連携 |
研究実績の概要 |
本研究の目的である日本型経営生産システムの国内と海外における歴史的変化とその含意を究明するために、まずは近年の日本企業の内外工場を訪問してその活動実態を調査し、得られた各種情報を整理・分析して、過去の評価結果と比較する。本年度の実績は以下のとおり。 1)国内では、トヨタ自動車東日本、宮城県産業技術総合センターを訪問調査した(2017年11月21日)。東日本大震災後の東北の新環境下で、地方自治体と共同して現地サプライヤーの育成を図るといった、大手自動車メーカーの従来にない新生産ネットワーク構築の試みがみられ、新興国での取組みを思わせた。2)海外では、ポーランド、ハンガリーの日系企業調査(2017年7月27日-8月5日)を行った。安保所属の日本多国籍企業研究グループ(JMNESG)が2003年などに調査した旧社会主義諸国に進出している日系工場を「再訪問」し、JMNESGのシステム移転の評価枠組み「ハイブリッドモデル」に準拠して、まず現地子会社の14年間の変化を測定した。そのうえで、この変化の要因を、現地経済社会環境に由来するものと日本側親会社の変化に関係するものを識別する作業を始めている。 その際この調査分析作業を助ける二つの研究環境があった。(1)分担研究者佐藤隆広所属の神戸大学経済経営研究所(RIEB)を拠点としたインド・南アジア研究グループとの連携で、安保と同グループによる2015-16年のインド調査結果は、JMNESGの2009-17年アフリカ調査結果とともに、日系現地子会社の現状と変化の多面的評価に貢献した。(2)ポーランドの研究助成で「ハイブリッド工場」研究をしているTomasz Olejniczak (Kozminski Univ.)との共同研究で、これが現地調査のレベルを高めた。 以上の研究実績が、研究成果報告書記載の各学会での報告、論文、図書などの研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・本研究の目的である日本型経営生産システムの国内と海外における歴史的変化とその含意を究明するためには、近年の日本企業の内外工場を訪問してその活動実態を調査し、得られた各種情報を整理・分析して、過去の評価結果と比較する必要があるが、国内と海外の有力工場を訪問して貴重な最新情報、資料を収集することができた。 ・歴史的変化を測定・評価するのに必要な過去(および一部は現在)のデータは、主に日本多国籍企業研究グループ(JMNESG)による調査結果を利用することができた。 ・この調査分析作業を助ける二つの研究環境があった。(1)分担研究者佐藤隆広所属の神戸大学経済経営研究所(RIEB)を拠点としたインド・南アジア研究グループと連携した2015-16年のインド調査結果、JMNESGの2009-17年アフリカ調査結果が、日系現地子会社の現状と変化の多面的評価に多大な貢献をした。(2)ポーランドで「ハイブリッド工場」研究をしているTomasz Olejniczak (Kozminski Univ.)との共同研究が、現地調査の効率と密度を高めた。 ・本調査研究の趣旨が多くの企業に理解され、予想以上の協力が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
以下、平成30年度の研究の推進方策を示す。 ・まず内外工場の訪問を続ける。 1)国内工場:(1)自動車;昨年度のトヨタに続き、ホンダ、日産、富士重工、ダイハツ、デンソー、曙(同年度における他の科研費と合わせたアメリカ、カナダ、メキシコ、マレーシャ、インドネシア、パキスタン、チェコ、ハンガリーの子会社訪問予定に際して、日本を代表する自動車・部品の親工場として)。(2)自動車以外;ダイキン、日本電産、パナソニック(同上の趣旨から)2)海外工場:(1)アメリカ(前述したJMNESGの「適用と適応のハイブリッドモデル」作成における日本型の対抗評価軸としての原点が、1980年代後半からどう変化したかを2018年時点において探る)、カナダ、メキシコ;トヨタ、ホンダ、日産、部品メーカー、(2)パキスタン;スズキ、トヨタ、デンソー、(3)チェコ;トヨタ、他、(4)南アジア;ダイハツ、パナソニック、他。 ・収集された情報・資料の整理・分析.・研究・評価方法の再検討:1)海外子会社の時間的変化・自立化を評価する際に進化論的視点を入れるかどうかの検討。2)基準年・軸問題;JMNESGが「適用と適応のハイブリッドモデル」作成において、1980年代後半のアメリカ型を対抗評価軸として日本型の原型を定めたが、これが、2018年時点においてどう変化したかを、異時点間における日、米のそれぞれの工場を比較しつつ探る。そこには、親-子会社のそれぞれの評価基準の変化をどう処理するかというやや複雑な挑戦問題があり、それを解決した上で、他の新興諸国における調査結果の評価にも向かうことができる。 ・研究会の頻度:以上のような情報整理、評価方法の検討、そして評価結果の集約に向けて、研究会の頻度を増やしていくことになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の予算が944円の残額が生じたのは、経費使用における端数の積み重ねによるものである。金額も少額であることから、基本的には使用計画に影響を与えないと考えるが、調査活動費として使用したいと考えている。
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