研究課題/領域番号 |
17K03928
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
厨子 直之 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (40452536)
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研究分担者 |
井川 浩輔 琉球大学, 観光産業科学部, 准教授 (80433093)
開本 浩矢 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (90275298)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アプリシエイティブ・インクワイアリー / 研修効果測定 / ソーシャル・サポート / 心理的資本 / 基本的心理欲求 / ヒューマン・サービス組織 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ヒューマン・サービス組織の管理職による部下へのソーシャル・サポートを促進する育成プログラムについて,アプリシエイティブ・インクワイアリー(以下,AI)に基づく研修に着目して明らかにすることである。本年度は以下の3点の研究を執り行った。 1.質的・量的調査に向けた先行研究レビュー:AI研修の効果測定に関する先行研究を中心に検討し,本研究の分析モデルの精査および定量・定性調査に向けた質問項目やインタビュー・ガイドラインの作成を行った。 2.量的予備調査:1で構築した分析モデルと質問項目の妥当性を確認するために,研究代表者と分担者がAI研修を実施したA病院に所属する2年目看護師85人を対象に2017年11月にパイロット調査を行った。分析の結果, AI研修が自身の仕事と関連していると認知している看護師は能動感と関係性という基本的心理欲求を向上させ,心理的資本の1次元であるポジティブ思考を高めることが見出された。以上の結果から,AI研修にはソーシャル・サポート提供の基礎となるメンバーとの関係性の構築を有効にする効果があり,最終的には創造性のような組織パフォーマンスに寄与することが示唆された。 3.質的調査:定量調査結果の具体的内容を解明するために,A病院の勤続10年以上の看護師が取り組んだソーシャル・サポート実践に関する記述データ(16名)の質的分析,さらに優れた実践を記載した2名の看護師に対して2018年3月にインタビュー調査を実施した。調査対象とした看護師には,2017年10月にAIに基づくソーシャル・サポート研修時に策定した行動計画に即して,半年間の実践内容について具体的に記述してもらった。分析の結果,ソーシャル・サポートの提供において,部下・後輩との関係構築が重要であることが浮かび上がり,本調査に向けて関係性を基軸とする分析モデルと尺度に改良する必要性が窺われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
応募申請時に設定していた今年度の研究計画として,1)理論研究,2)質的調査(インタビュー調査)を挙げていた。1)に関しては,上記の研究実績の概要で記載のとおり,当初の計画を達成することができた。2)については,上記のように看護師2名へのインタビューに加え,当初予定されていなかったソーシャル・サポート実践に関する記述データの分析を追加的にすることが可能となった。さらに,研修の定量的な効果測定は当初計画では平成30年度から開始する予定であったが,ワンショットであるものの,平成29年度において執り行うことができた。以上の理由から,当初の計画以上に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,応募申請時に設定した研修効果の測定について,量的データを中心に質的データも収集することが挙げられる。具体的には,ソーシャル・サポート提供の原動力となるメンバー間の関係性の程度,心理的資本をはじめとするメンバーのポジティブな心理・態度変数に関して,AI研修の前後における変化を検証する。その際,特に平成29年度は1回のみのサーベイに留まっていたが,研修後の複数時点でAI研修の効果測定に取り組む予定である。なお,平成30年度から研究代表者が担当するA病院におけるAI研修が2回から4回に増加し,受講対象となる看護師の属性も多様になることから,多面的な観点からAI研修の効果測定にアプローチすることが可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に繰越金が発生した理由は,当初計画していた予算額よりも低い価格で計上することが可能となったことである。繰越金に関しては,来年度,収集できなかった文献資料の購入・複写代金に充当する計画である。
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