研究課題/領域番号 |
17K03935
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高田 仁 九州大学, 経済学研究院, 教授 (70363314)
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研究分担者 |
中川 功一 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (40510409)
松橋 俊彦 大阪大学, 共創機構産学共創本部, 特任研究員(常勤) (60543923)
加藤 浩介 大阪大学, 共創機構産学共創本部, 講師 (90444504)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | サロゲート・アントレプレナー / TTP(技術移転プロフェッショナル) / 技術商業化 / アントレプレナーシップ / 大学発イノベーション |
研究実績の概要 |
本研究は、大学等で生まれた技術を破壊的なイノベーションに結びつけるために、技術商業化のフィージビリティ・スタディを担って技術価値を顕在化させ、事業にコミットする起業家へと橋渡しする第三者を『ナーシング・アントレプレナー(NE;乳母起業家)』と定義し、そのコンピテンシーを明らかにすることを目的としているが、初年度である平成29年度は、このNEにまつわる概念の整理を先行して行った。当初計画では、優れた成果を挙げているNEの同定とその事例把握(定性調査)を行う予定であったが、それに先立って、NEの概念を理論構築して論文等で対外発表し、その妥当性をピア・レビューを通じて検証することがより重要と考えたためである。 具体的には、先行研究のレビュー、AUTM(Association of University Technology Managers)やATTP(Alliance of Technology Transfer Professional)といった国際的な専門家団体による近年のTTP(=技術移転プロフェッショナル人材)のあり方にかんする関する議論、さらには数例の典型例についての事例調査・分析にもとづき、NEの概念について理論を構築した。特に、発明者の「代理人」の機能を果たしてきた従来型のTTPとの比較を通じて、より主体的に事業機会を見出して価値創造するアントレプレナーとしてのTTPの機能を明らかにし、NEの概念に含めて整理した。 この研究成果は、イノベーションに関する国際学会であるISPIM Innovation Conference(スエーデン・ストックホルム、平成30年6月17~20日開催、査読付)で口頭発表することが既に決定しており、プロシーディングで論文本体も公表されることとなっている。また、並行して国際ジャーナルへの投稿準備を進めており、近々投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、平成29年度には優れた成果を挙げているNEの同定とその事例把握(定性調査)を行う予定であったが、それに先立って、NEの概念構築と学会発表を優先して研究に取り組んだ。なぜなら、本研究が対象とするNEは、従来から提唱されている理論フレーム(大学研究者すなわちアカデミック・アントレプレナー=AEと起業家すなわちサロゲート・アントレプレナー=SE)に対して新しいアントレプレナーの概念を付加的に位置づける意味を持つため、他者に先んじて学会発表するとともにピア・レビューを通じてその概念の妥当性を検証することが重要と考えたためである。
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今後の研究の推進方策 |
ISPIMでの発表・討議や論文でのNEの概念提示を踏まえて、フィールドでの調査内容を設計して調査を実施する。具体的には、優れた成果を挙げているNEを全国の産学連携組織のなかから同定して事例把握(定性調査)を行い、複数のNEの比較分析から、NEが備えるべきコンピテンシーや役割について明らかにする。その際に、熟達した起業家研究にみられる、複雑性を持ちながら機会を増大させ、当初の局在的な可能性から選択肢を拡大させようとするエフェクチュエーションの行動特性に着目し、NEにおいてこのエフェクチュエーションがどのように発揮されているかを詳細に調査する。その後、定性的な調査結果を裏付けるために、調査票を用いた定量調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
もともと平成29年度に予定していたNEに関する事例調査の前に、NEの概念構築と国際学会での発表申請を優先させたため、研究代表者および研究分担者が予定していた国内事例分析に要する旅費支出が大幅に減ったためである。ただし、研究代表者は研究分担者との打ち合わせを複数回行う必要があったため、研究代表者については旅費支出が大きく発生している。 なお、平成30年度は、NEの概念構築に関する国際学会での発表が決定しているため、当該学会参加費および渡航費を支出する。また、NEの概念構築を受けて、平成29年度に未実施だった国内外の優れたNEの同定とその事例調査を行う予定であるため、未使用額についても平成30年に合わせて支出予定である。
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