研究課題/領域番号 |
17K03937
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
西村 孝史 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (40508462)
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研究分担者 |
西岡 由美 立正大学, 経営学部, 准教授 (30369467)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ソーシャル・キャピタル / 社会関係資本 / 戦略的人的資源管理 / 働きがい / 職場業績 / 人事管理 / 成果主義 / 長期雇用 |
研究実績の概要 |
2017年度は,共著を含め研究発表を5本(日本労務学会2本,経営行動科学学会1本,研究会への招待講演2本)行った。特に経営行動科学学会で発表した「ソーシャル・キャピタルと人材マネジメントが職場業績に与える影響-3時点データを用いた実証分析-」は,本テーマにとっても最も根幹にかかわる内容であり,招待論文として2018年度に学術雑誌に掲載される予定である。また,職場のソーシャル・キャピタルを高めるために人事部がどのようにかかわるのかについて労使関係論と組織開発論とを組み合わせた講演を行った。 他にも本テーマにかかわる調査を3本実施した。1つは,インターネット調査であり,従業員認知に基づく人事施策の束,柔軟性,および人事施策の持つ強さとソーシャル・キャピタルにかんする調査である。人事施策の持つ強さがソーシャル・キャピタルに与える影響は世界的にも研究されておらず,人事管理・組織行動論の分野で新しい知見を提供できる可能性が高い。なお,この調査は,2018年度中に再度同じ対象者に実施することで時系列データとして整備する予定である。2つ目は,ソーシャル・キャピタルと職場マネジメントに関する調査を1社を対象に実施した。本調査では,過剰な職場のかかわりがかえってソーシャル・キャピタル形成を妨げる可能性があることを検討することを意図している。3つ目は,2つの目の企業調査とは別の企業を対象に実施された企業調査で,ソーシャル・キャピタルと人事考課を対象に実施した調査であり,2018年度中に取りまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,研究の核となる部分について学会発表を行った点,ならびに次年度につながる調査を3本実施した点で概ね順調に進んでいると言える。当初の予定では,インターネット調査は,年度内に2時点目(T2)の調査まで終えて,新年度でその分析に取り掛かることを想定していた。しかし,予想以上に1時点目(T1)の調査設計に時間がかかってしまい,T2の実施予定が年度末にかかることから回答者の負荷やバイアスの除去を考慮し,年度をまたいで実施をした方がデータの信頼性が高まると判断した。その意味で当初の予定よりデータの収集は遅れている部分がある。 また,学会発表では3時点データを用いた分析を発表したが,その際,脱落サンプルによる欠損処理や切断回帰を行う必要があるという指摘を得たため,さらなる内容の向上のために修正を加える必要がある。研究内容のブラッシュアップのためには,これまで使用していた統計ソフトでは対応できず,別の統計ソフトを用いた分析が必要であることから,新しい統計ソフトの習熟と再分析が次年度以降の課題となっている。 また,特定企業ではあるものの,部署レベルまで特定可能なデータを入手することができたため,個人レベルと組織レベルのソーシャル・キャピタルを弁別するためにマルチレベル分析を試みる予定である。今年度はデータの収集が目的であり,その意味で当面の目標はクリアしていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,積み残しとなった以下の4点について研究を進める予定である。第1に,2時点調査の2時点目(T2)の調査の実施である。因果の特定のために前回の回答から少なくとも3ヵ月以上のラグを取ることを想定しており,上期中に実施する。第2に,脱落サンプルの推計と切断回帰の実施である。これまで収集したデータの推計結果の精度をあげるために新しい統計ソフトを用いたうえでそれらの成果をまとめる。第3に,個別企業から得られた回答を用いて個人データをネスト化し,マルチレベル分析を実施することで個人レベルと組織レベルのソーシャル・キャピタルを弁別する。第4に,それらの成果をブックチャプターとした専門書の執筆を予定している。専門書の執筆は次年度と最終年度にかけて行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に使用額が生じたのは,主にインターネット調査が年度内に完結しなかったため調査費用が残ったからである。さらにその調査から得られた結果を海外ジャーナルに投稿および発表するための旅費・校閲費である。
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備考 |
ソーシャル・キャピタルと埋め込み(embeddedness)およびキャリアとの関係性を検討すべく,既存のデータやインタビューに基づいて記述したコラムである。都心部に住み,仕事上でも(on the job embeddedness),仕事外でも(off the job embeddedness),深く埋め込まれている人が自発的に転職する状況を分析している。
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