企業において、上級管理職以上の職位にある人々に対するヒアリング調査を実施した。その人々が、企業の内外に構築している「主要な(核となる)」ネットワークについて聞き取った。調査における「主要な」とは、現在の「意思決定(とくに変革指向性)に影響を与えている」と主観的に認識できるレベルのものを指している。複合戦略モデル(佐藤・山田(2004)『制度と文化』)で想定される、影響経路のバリエーションを調査に盛り込んだ。 今年度の調査では、ヒアリング対象者の中でも、とりわけ「変革指向性が高く」、かつそれを「長年にわたって持続」していると思われる人物に注目した。大手の経営コンサルティング企業勤務(コンサルタント、役員を歴任)を経て独立し、経営コンサルティング企業を創業している。その人物のキャリア形成過程、および構築しているネットワークの変遷を詳細に聞き取り、事例として記述した(2020年3月)。 事例分析において、まず外形的には、キャリア形成に伴って新陳代謝と多様性を増していくネットワーク構築のプロセスが描き出された。そして、構築しているネットワークからの影響内容については、2つ側面が浮き彫りとなった。ひとつは、ネットワークとつながることでその人物が携わる事業に直結した知識の獲得と更新が起こるという側面である。もうひとつは、構築されたネットワークから受ける、心的エネルギー高揚(使命感の高揚)の側面である。 経営コンサルティングという事業特性に配慮する必要(本調査の限界)はあるものの、「知の獲得・更新と心的エネルギーの高揚という2つの側面が動態的に結びつくことで、調査対象者の変革指向性の持続がもたらされている可能性がある」という仮説が垣間見えた。
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