2023年度は、実施を計画していたWEBアンケートについて、年度末にかけて技術者のキャリアと創造的成果にまつわるWEB調査を、全国企業対象1回目計500件、全国企業対象2回目計400件、地元中小企業A社21件、の3回実施した。これら3回のWEB調査は、共通のアンケート調査枠組みに基づき質問項目の多くを共通化して実施している。 これらのWEBアンケート調査結果のうち、まず地元中小企業A社での調査結果を用いて分析を実施した結果、技術者が自発的に高いレベルの仕事を行う経験や技術者同士が触発し合う経験を持つ技術者の創造的成果が高い可能性が示された。また、全国企業対象2回目計400件についての分析からは、多様な経験を持つ技術者のほうが、多様な経験を持たない技術者よりも創造的な成果にまつわる自己評価が統計的に有意に高いことが示されたが、多様な経験を構成すると考えた9つの経験のなかで、創造的な成果と有意に関係するのは、要素技術と全体設計とのジョブ・ローテーション経験のみであった。 今回の研究では、企業への調査実施を計画していた補助期間の後半にコロナ禍に見舞われて調査先企業への訪問などによる調査申し込みやアンケート調査実施が難しくなったうえ、勤務部局におけるコロナ禍での対応業務に奔走することになった。さらに勤務部局内の中心教員が病気で急逝して、当該教員の担当業務の代替でさらに業務が輻輳するなど、想定外の事態に見舞われたため、当初に計画していた形での研究が実施できなかった。しかし、コロナ禍後の社会情勢をふまえて、WEBアンケートを中心にするかたちに研究計画を見直して、技術者の多様な経験と創造的な成果にまつわるWEBアンケートを複数回実施することができた。そしてその一部の調査結果からではあるが、多様な経験が技術者の創造的な成果を向上する可能性を支持する研究成果を得ることができた。
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