研究課題/領域番号 |
17K03950
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
大内 紀知 青山学院大学, 理工学部, 教授 (10583578)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プラットフォームビジネス / 普及 / ネットワーク効果 / テキストマイニング |
研究実績の概要 |
本研究は、プラットフォームビジネスにおけるサービスの普及の促進・阻害要因の解明を進めてきた。平成31年度は、前年度に引き続きフリマアプリ市場に着目した。これは、フリマアプリ市場で圧倒的なシェアを有するアプリが後発アプリであったことから、ネットワーク効果が働く市場で先発アプリを逆転するための示唆を得られることが期待されるためである。プラットフォームビジネスでは、サイド間ネットワーク効果が働くため、売り手が増えると買い手が増え、買い手が増えると売り手が増える。そのため、売り手と買い手のどちらを、どのように優遇した方が良いのかという問題が存在する。これまでも優遇策に関しては、価格設定の影響などいくつかの研究はあるが、必ずしも十分に検討されていなかった。そこで、本研究ではフリマアプリ市場を対象とし、ユーザレビューのテキストデータを分析することで、価格設定以外での効果的な優遇策を明らかにすることを試みた。 具体的には、(1)トップシェアのアプリにおける特徴的な売り手もしくは買い手への優遇策に関するトピックを抽出し、(2)抽出したトピックについて、各アプリにおける売り手と買い手の印象の差を評価し、どちらを優遇していたかの比較を行った。 分析の結果、売り手と買い手がそれぞれを評価する評価機能が注目すべきトピックと抽出された。そして、評価機能の仕組みに関して、トップシェアのアプリは買い手を優遇し、その他のアプリは売り手を優遇したことが伺えた。このことから、フリマアプリ市場においては、サイド間ネットワーク効果は、買い手から売り手の方が、売り手から買い手への影響よりも大きかった可能性が考えられる。価格設定以外にも、評価機能などの仕組みが売り手と買い手への優遇策として有効に機能した可能性が示唆された。これらの研究成果は学会で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の平成31年度の実施計画では、前年までに得られたプラットフォームビジネスにおける普及の促進・阻害要因についての更なる分析、インタビュー・ヒアリング調査を踏まえて普及戦略の要点の整理し、論文投稿、学会発表をする予定であった。 プラットフォームビジネスにおける普及の促進・阻害要因については、前年までの成果を踏まえて、チキン・エッグ問題に着目した。フリマアプリ市場において、圧倒的に高い市場シェアをもつアプリが、売り手と買い手のどちらを、どのように優遇したのかをユーザレビューのテキストデータを分析した。それらの成果を学会で発表しており、この点においては順調に進めることができた。また分析対象を拡大するため、QRコード決済の普及に関する分析も実施した。この分析では、アンケート調査を実施し、それらのデータを用いてプラットフォームビジネスにおけるネットワーク効果の分析を試みた。分析の過程で、新たな発見と課題が発生した。今後、分析を進め成果を学会で報告する予定である。インタビュー・ヒアリング調査に関しては、時間的な問題などもあり、必ずしも体系的に実施できなかった。そのため、本来であれば、インタビュー・ヒアリング調査から得られた知見と定量分析の結果を融合して普及戦略の要点の整理を行う予定であったが、本年度は十分に行えなかった。それらを踏まえ、「やや遅れている」という状況である。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度に実施したアンケート調査のデータを用いたネットワーク効果の分析において、新たな発見と課題が確認できたため、本年度に追加アンケートを実施し、そこからの分析結果を踏まえて、研究成果をまとめ発表する。加えて、これまでに得られたプラットフォームビジネスにおける普及の促進・阻害要因を整理した上で、学会で報告する。このような学会や研究会の場で研究成果に関する専門家の意見交流を通じて、分析結果の検証、モデル・分析手法の改善を行いながら、プラットフォームビジネスにおける普及戦略の要点の整理をしていく。加えて、既存の研究者とのネットワークに加え、新たな学会に参加するなどして、研究者とのネットワークを拡大していくとともに、政府・企業の関係者とのネットワークも拡大する。それらの人的なネットワークを生かしインタビュー調査やヒアリング調査を実施する。インタビュー調査やヒアリング調査はオンラインでの対応も検討する。これらの定性的な分析とこれまでの定量的な分析を融合して、研究成果をまとめ学術誌などで研究成果を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、令和元年度にアンケート調査を実施し、それらのデータを用いてプラットフォームビジネスにおけるネットワーク効果の分析を試みた。分析の過程で、新たな発見と課題が発生し、予定にはなかった追加のアンケート調査が必要になった。また、インタビュー調査やヒアリング調査は、時間的な問題などもあり、必ずしも体系的に実施できなかった。 そのため、アンケート調査、それを基にした分析、インタビュー調査やヒアリング調査に使用する。
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