本研究は、プラットフォームビジネスにおける「普及段階に応じたネットワーク効果の変化」「普及の促進・阻害要因」の定量的な解明をねらいとして研究を進めてきた。 令和2年度は、モバイル決済アプリ及び個人間送金機能の利用に影響を与えている要因を分析した。モバイル決済アプリの利用有無の要因に関して、スマホアプリに苦手意識を持つ人は、モバイル決済アプリの不安や疑問を解消できる相手がいることがモバイル決済アプリの利用に影響を与えること、個人間送金機能の利用意思決定には、スマホアプリに苦手意識を持つ人は、疑問や不安を解消できる相手が特に信頼関係のある「家族」であることが利用に影響を与えている要因であることを示し、プラットフォームビジネスの「普及の促進・阻害要因」に関する新たな知見を得た。 研究期間全体の成果としては、まず、ゲーム機市場の分析から、普及段階に応じてネットワーク効果の大きさが変化することを示した。さらに、フリマアプリ市場におけるユーザレビューのテキストデータの分析から、フリマアプリ市場において後発アプリが普及に成功した要因として、先発アプリのネットワーク効果の影響がまだ小さい段階で市場へ参入し、その後、ネットワーク効果が他のアプリに比べ高くなり、さらに、普及の成長期になると、ネットワーク効果における優位性が際立っていたことを示した。加えて、フリマアプリにおける評価機能の仕組みに関して、トップシェアのアプリは買い手を優遇し、その他のアプリは売り手を優遇していたことを示した。このことから、フリマアプリ市場においては、サイド間ネットワーク効果は、買い手から売り手の方が、売り手から買い手への影響よりも大きかった可能性が示唆された。本研究は、定量的な分析を通して、プラットフォームビジネスの普及に関する理解を深めることに貢献をした。
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