• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2017 年度 実施状況報告書

大転換期における技術経営の進化的側面の研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K03953
研究機関芝浦工業大学

研究代表者

田中 秀穂  芝浦工業大学, 工学マネジメント研究科, 教授 (00378712)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード特許 / 技術経営 / 前適応 / 大転換 / 隣接可能性
研究実績の概要

本研究の平成29年度の研究計画として、1)写真フィルム産業の技術投資分析、2)同産業の事業多角化分析、実施するとしていた。本年度はこれに対し、富士フイルムとコダックを対象として、特許データを使用して転換期の前後での技術投資の状況を分析し、産業寡占度を測る指標として用いられているHerfindahl-Hirschman Index, HHIを集中度を見る指標として活用し、技術投資の分野の広がりを検討した。また各技術分野への投資を個別に解析するなどの手法を用いて詳細に分析した。さらに発明者ごとの技術分野の変遷を分析して、技術投資の変化を個々の研究者の単位、組織の単位で分析した。さらには技術の組み合わせによるイノベーション発生を高める隣接可能性の探索の視点から、転換期前のコア技術がどのように展開されたのかを分析した。これらの技術投資分析で明らかにした多角化技術が、事業の多角化にどのように結びついたのかを明らかにするために、大転換期の前後の事業分野と技術分野の対応を解析して技術投資戦略の一貫性についても検討した。
これらの分析により、技術経営の前適応(Preadaptation)の概念を見出しその意義を検討した。前適応とは進化学用語で、ある適応形質が形作られる際に以前から存在した別の機能を持つ形質が用いられることを意味し、大きな環境変化の前にすでに次の時代に貢献する適応形質が形作られていることを示す。同様に大転換期に先立って技術の多角化を進め、転換後の市場で役に立つ可能性のある技術を準備することの重要性を指摘する理論である。
上記の成果については、IAMOT2017:International Association of Management of Technology、および研究・イノベーション学会において発表も行った。これらは研究計画前倒しでの実施である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

研究実績の概要に示した通り、平成29年度の研究計画に掲げた研究項目を順調に実施して、写真フィルム産業の大転換期における技術投資分析と事業多角化への貢献を明らかにして、技術経営における「前適応」の重要性を見出した。またこれらの成果を、研究計画を前倒してオーストリア、ウィーンで開催された国際学会、および国内学会で発表を行った。これは計画を上回る成果である。
加えて、平成30年度の研究計画に予定されている、写真フィルム産業に加えて大転換期を乗り越えた他の産業の事例についての同様の分析についても予備的に前倒しで着手した。具体的にはデジタル化に大きくその事業が影響されている音楽、楽器産業について注目した。同産業の状況について予備的に情報収集し、特にこの音楽産業の大転換期を生き残りグローバルに事業の拡大を続けているヤマハ株式会社について、各種資料を集めた。これらの資料をもとに平成30年度に具体的な分析を実施する。

今後の研究の推進方策

平成30年度の研究計画としては、平成29年度に見出した知見を他の産業、企業で確認することをあげている。具体的には平成29年度に分析した写真フィルム産業に加えて、大転換期を乗り越えた他の産業の事例について同様の分析を行うこととし、対象となる産業の候補としては、繊維産業(東レ、東洋紡、帝人など)、建設業、自動車部品産業など他の産業についても継続して可能性を検討するとしている。なお対象産業は当初は繊維産業を第一候補としていたが、現在までの進捗状況に記述したように、これらに加えて音楽、楽器産業についても検討を始めており、これらの中から詳細な分析を実施する産業を決定する。
具体的な分析としては、研究計画にあげている技術投資分析と事業多角化分析を実施する。技術投資分析としては、転換期前のIPC数の拡大、HHIなどの寡占度指標を示し、また各技術分野への投資を個別に解析するなどの手法を用いて詳細に分析する。また発明者ごとの技術分野の変遷を分析して、技術投資の変化を個々の研究者の単位、組織の単位で分析する。さらには隣接可能性の探索の視点から、転換期前のコア技術がどのように展開されたのかを分析する。事業多角化分析としては、技術投資分析で明らかにした多角化技術が、事業の多角化にどのように結びついたのかを明らかにする。大転換期の前後の事業分野と技術分野の対応を解析、多角化事業の創出に貢献した組織戦略の明示を研究協力者などの協力を得て実施する。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、研究データ整理にあたるアルバイトの使用を若干控えて研究担当者が行ったこと、特許データベースの使用料がかからなかったことなどによる。平成30年度の使用計画については予定通り、現地調査費、アルバイト料、図書費、データベース使用などについて支出する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2017

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Preadaptation strategy in technology management2017

    • 著者名/発表者名
      HIDEHO TANAKA, KEIICHIROU MASUDA
    • 学会等名
      International Association of Management of Technology
    • 国際学会
  • [学会発表] 大転換期の技術経営における前適応のメカニズム2017

    • 著者名/発表者名
      田中秀穂
    • 学会等名
      研究・イノベーション学会

URL: 

公開日: 2018-12-17  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi