昨年度同様に、行動エージェンシー理論や社会情緒資産理論をベースとして、ファミリー企業のレジリエンスやリスクテイキングに関して考察を行った。本年度は、日本企業を中心にファミリー所有ならびに、ファミリー出身の取締役が研究開発投資に対して与える影響をリスク環境、機関投資家との関わり合い、企業のレジリアンスの観点から分析をした。 ファミリー所有自体は、研究開発投資に対して負の関係を捉えることができ、安定的な環境においては、ファミリー企業は、リスク投資に対して保守的な姿勢を示すことを把握することができた。他方、企業のレジリエンスの代替変数としてPerformance Hazardを調節変数とし、ファミリー所有と研究開発投資の関係を分析したところ正の効果を確認した。すなわち、厳しい環境におかれても、研究開発投資を継続することにより、この環境を乗り切り、企業の永続性を確保しようとする、ファミリー企業の経営姿勢が示されたのである。また、安定的な環境であっても、機関投資家の所有度合いがファミリー企業の研究開発投資に正の影響を与えることが分析から示された。機関投資家のファミリー企業へのガバナンスがファミリー企業のリスクテイキングの行動を促すことが明らかにされた。 このように、ファミリー企業は安定的な環境においては、保守的な経営を指向する一方、厳しい環境においてはリスクをも厭わず、ファミリーの社会情緒資産を確保しようとする行動を捉えることができた。
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