研究課題/領域番号 |
17K03966
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
品川 啓介 立教大学, ビジネスデザイン研究科, 特任教授 (70791549)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 研究軌道 / 知識創造 / 経路依存 / 科学進歩 / Knowledge leader / 知識爆発 / 科学的イノベーション / SECIモデル |
研究実績の概要 |
青色LED開発研究に関わった研究者における知識創造過程と研究軌道発生過程について文献調査を基に技術経営の理論フレームワークへの当てはめを行った。その結果を、ISPIM(International society for professional innovation management)Innovation summit 2017 Melbourne にて報告した。 研究実績の概要は以下のとおりである(上記国際会議報告内容も同じ)。青色LEDの本格的な研究が始まった1970年始め~1990年後半、青色発光素子材料の候補であったGaN結晶及びZnSe結晶について、それぞれ論文書誌情報の分析(製品開発に関わる論文の累積数推移、被引用数、頻出キーワード)を行った。製品開発に成功したGaN開発研究と、製品成功に至らなかったZnSe開発研究について、それぞれの研究に関わる論文累積数推移を観察し特有の「研究経路」が存在することを見出した。GaN開発研究には論文数が緩やかな上昇から急増に至るような経路、一方ZnSe開発研究は緩やかに単調増加する経路が確認された。GaN開発研究については被引用数の高い研究を抽出し、知識爆発の要因となった研究を特定し、後に青色LED開発研究への貢献でノーベル賞を受賞した赤崎氏、天野氏、中村氏の研究論文が見出された。赤崎氏、天野氏の研究はGaNを用いた青色LED開発研究の起点(新しい研究分野の発見という意味で起点)であり、中村氏の研究は知識爆発の起点(イノベーションの起点)となる研究であることがわかった。この概念を考慮し文献調査をベースにGaN開発研究、ZnSe開発研究の知識創造過程を分析する著名なフレームワークであるSECIモデルに当てはめることで、暗黙知を形式知化するというKnowledge leaderとしての役割を中村氏が果たしたことを明確にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
青色LED開発研究に関わった研究者における知識創造過程と研究軌道発生過程の文献による調査及び、これをもとに整理したデータの技術経営の理論フレームワーク(科学進歩の分析フレームワーク、知識創造における著名なフレームワークの一つであるSECIモデル)への当てはめを完了した。その結果を、イノベーションマネジメントを専門に扱う国際会議での発表も行ってい高い評価を得ており理論的に問題ないことを確認している。 上記の結果から、青色LED開発研究における知識創造のknowledge leader(暗黙知を形式知に変換する役割を果たす人物)と認識される中村修二氏へのインタビューも平成29年10月に実施済みである。その成果は平成30年6月に催されるISPIM(International society for professional innovation management)Conference 2018 Stockholmの審査に通過しており発表準備が整いつつある。発生した経路が企業の研究開発部門に及ぼした影響の分析については文献レベルで調査が進んでいる(現在、企業の開発研究関係者へのインタビューを残すのみとなっている)。以上から、(2)おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に予定しているEUVL露光装置とNanoimprint開発研究における発展経路とその影響の理論化に関するの研究について、平成29年度の研究で確立した理論フレームワークを用いた予備調査は完了しており、経路発生過程、経路の傾向に矛盾がないことを確認している。よって、平成29年度の研究と同じ手法・手順で研究を進めることが平成30年度以降に予定している研究の推進方策となる。
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