本年は最終年度にあたるため、これまでの研究成果を活用し、社会インパクトを拡大する研究開発を推進する仕組みとして「ODAのイノベーション化」を取り上げ、考察を行った。また、本年は異動により所属する研究機関が変わったため、研究継続のためパソコンや周辺機器の調達を行い、研究体制の整備を行った。「イノベーション化」とは内閣府科学技術イノベーション担当が近年使用している概念であり、非科学技術予算に対して科学技術によるアプローチを付与することにより、事業の効率化や高度化を実現するとともに科学技術研究への知の還元を目指す取組を意味する。内閣府では、各府省の事業の中でも特にイノベーション化に適した事業を抽出し、予算の重点配分を行っている。その中で、ODA(政府開発援助)については、内容が多岐に渡るためこれまでイノベーション化の対象とされてこなかった。本研究で開発した手法によって、事業の属性情報(タイトル、概要、OECD開発援助委員会が指定する各種の付帯情報)を基に、事業の科学技術との関係性について評価を行った。分析を行うにあたり、ODAに関する公開情報をJICAのウェブサイトから抽出し、幾つかの事例に対して目視によるタグ付けを行った。タグ付けを行ったテキストを学習データとして、機械学習による分類(科学技術との近接性)を試みた。また、OECDの開発援助委員会(DAC)が構築するデータベース(CRS)を精査し、必要項目の抽出を試みた。これらの作業の結果、日本のODAにおける科学技術・イノベーション(STI)の活用状況について把握することが可能となった。把握された情報を元に社会インパクトを高めるための研究体制の在り方について考察した結果、研究テーマや研究体制における多様性が社会インパクト拡大に貢献することが示唆された。
|