在外日本人女性の起業家活動とその成功プロセスについて、「移民先と母国」との視点も交えながら定性調査によって探索するものである。本調査では起業家性向を測るEO理論と、エフェクチュエーションの理論を併用して作成した半構造化インタビューガイドにより在外日本人女性起業家をインタビュー調査し、MGTAにより分析した。 結果、リスク性向が高い一方で競争性向は低い特徴を捉えた。これは移民ゆえの周囲の軋轢を避けるためと推測しうる。筆者の他研究でも在日外国人起業家で同様の結果を得ている。ファミリービジネス出身者、女性ゆえに後継者になれなかった(承継外子女)も当初の想定以上に多く、起業した後は大半がファミリービジネスとして発展し、地域に密着したビジネスとして成長するという知見を得た。 よって本研究のリサーチクエスチョン「在外日本人女性起業家の起業プロセスと成功要因は何か」については、リスク性向の高いビジネスモデルを志向しながら、地域に密着したスタートアップとして競争性向の低いマネジメントを実施、ファミリービジネス化、ローカル企業化を志向することがその答えとなる。 加えて、研究当初の想定外の発見としてマイクロアントレプレナーシップ活動を支援する都市機能の存在も発見した。研究当初に想定した以上に、在外日本人女性起業家の商業活動が小規模都市にも拡大しており、大都市よりも小規模地域の方が支援が手厚く、子育てや家庭生活にも適しているとして好まれ、起業後は地域に根ざしたFB として発展、大企業化や上場を目指さず地域経済の発展に寄与しているとの発見も得た。 この発見を端緒に、小規模都市におけるスタートアップ集積を、移民起業家、女性起業家誘致の観点から探索すべく次の研究課題に着手したところである。
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