研究課題/領域番号 |
17K03980
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
善本 哲夫 立命館大学, 経営学部, 教授 (40396825)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 建設生産システム / 自律分散制御 / i-Construction / 生産システム高度化 / 生産性向上 |
研究実績の概要 |
日本国内の建設業では,i-Constructionおよび建設・インフラDXを旗印にICT導入推進が叫ばれるが,しかしながら,中小規模建設工事や中小建設業では普及・活用が進んでいない状況にある。地方圏中小建設業は労働力不足,就業者の高齢化が深刻であり,事業継続が難しいケースも生まれている。本研究は,中小建設業の固有性と強みを活かす建設プロセスのありようを問い,デジタル技術の効果的な活用と導入について研究を進めている。特に,本研究では従来の生産工学的アプローチと作業改善アプローチの双方をシステム化し,建設生産システム革新に向けた実証研究および論点整理,課題発見に努めている。また,世界の最先端にある自動化施工システムの調査研究や建設DXの先端的取り組み,また中小企業によるチャレンジングな試行錯誤的施工現場調査を実施し,自律分散制御による建設生産システムの到達点やそれらの中小規模工事への適用可能性や論点の抽出を試みている。 さらに,本研究は中小建設業者および建機レンタル業者と協働でデジタル技術実装およびカイゼン定着,建設プロセス革新の実証実験に取り組んでいる。これら成果を2022年度に単著論文と学会での共同発表として公開していく予定である。 また,本研究は当該建設業の潮流と製造業のデジタル技術実装やDXの動きをクロスオーバーさせる視点から,業種横断的な生産システム高度化の知見を統合することも視野に入れ,現場調査を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染拡大予防のため,現場調査が実施可能な時期に大きな制限があったものの,予防策を徹底し,建設企業,官公庁の協力を得て実証実験への参画およびインタビュー調査を実施し,2021年度は2本の研究論文発表と1回のシンポジウムのパネラー登壇を実施することができた。特に,デジタル技術実装の実証実験では,中小建設業によるAI活用や遠隔臨場システム開発,ボトムアップ型のマシンガイダンス開発に参画し,Zoom利用を含むディスカッションを実施することができた。また,建設3Dプリンタのスタートアップ企業へのインタビュー調査を実施し,その事業展開から建設プロセス革新におけるサプライチェーンのありようにも目を向け,研究フォーカスを広げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
中小規模建設工事・中小建設業者との協働で,新たな建設プロセス・建設生産システム革新の実証実験を計画している。また,大手ゼネコン,準大手ゼネコンによるデジタル技術実装,そして建機レンタル大手業者の協力のもと研究調査を深化させていく計画である。従来の研究方向性である工学的アプローチと作業改善アプローチの有機的統合によるシステム化によって,建設現場の生産性向上モデル構築に取り組む。 また,これら建設生産システムの革新生産性向上モデルを建設業の働き方改革に結びつけていく。建設業界は「3K(きつい・汚い・危険)」の職場から高水準の給料,休暇,希望の「新3K」を実現する体質へと転換させるべく,官民をあげた取り組みを加速化させようとしている。こうした動向にも視野を広げながら,また製造業による変革の取り組みとの比較検討を実施し,研究高度化に取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大予防のため,予定していた現場調査・インタビュー調査の一部を中止せざるを得なくなったため,次年度使用額が生じた。 2022年度は新型コロナウイルス感染拡大の情勢をみながら主として現場調査・インタビュー調査のための旅費および建設施工現場が車でしか行けない箇所へのレンタカー費用として使用し,一部を調査データ保存用記録媒体の購入費として使用する計画である。調査先は国内を予定している。
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