既存市場へイノベーションが普及する過程における製品価値と採用者ネットワークの解明

2017 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 17K03983
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 筒井 万理子 近畿大学, 経営学部, 准教授 (40388492)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2020-03-31
• キーワード: イノベーションの普及 / イノベーションの採用者 / 製品価値 / 実践共同体 / 医薬品

研究実績の概要

本研究ではイノベーションの普及、イノベーションが登場する前から存在していた製品や従来の採用者の活動の影響を踏まえたうえで、新製品というイノベーションが普及する過程を解明しようとするものである。具体的には、医薬品が販売される前から存在していた治療方法や既存の治療用医薬品の影響の踏まえ、その採用者である医師たちによる新薬の認識と採用状況の調査・分析を行なうものである。
本年度は、複数の医薬品の普及過程の解明に関わるデータの収集と分析を行なった。量的データと質的データとのそれぞれに適した分析方法を用い、本研究の成果につながる分析結果を得ている。量的データからは、ネットワーク分析を用いて採用者が医薬品の情報をやり取りしていると想定されるネットワークが発見された。また、質的データからは、医師など医療従事者といった医薬品の採用者が当該医薬品への取り組みが明らかとなった。医師ネットワークを詳しく検討する中で、採用者ネットワークの特性（構成するメンバーの数、メンバーの所属や経歴の多様性）の考察が深まった。これは新しい医薬品の普及を解明するための情報として重要であると言える。
本研究において分析に用いるデータは、主に公表されている論文や報告といったフォーマルなデータである。インフォーマルに得たデータのように分析結果を公表することに問題が生じる恐れが無いため、データ分析の結果は随時公表が可能であり、論文等で発表できるよう準備を進めている。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で用いるデータは主に論文や報告といったフォーマルな情報であるため、インフォーマルデータに伴うデータ収集や公表の困難性を伴わない。データ収集と分析は、おおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

現在行なっている調査・研究の成果を学会報告や論文として公表し、そこで得られた意見やアドバイスを今後の研究に反映させる予定である。また、現在研究中の研究に加え、新たな研究対象の調査に着手する予定である。それらの研究成果から医薬品普及のパターンを得ることを目指す。

次年度使用額が生じた理由

次年度に高額な分析ソフトを購入する可能性、高額な講習会を受講する可能性があるため、本年度は予算を残すことにした。
上記の支出を行なわない場合は、ヒアリングの出張費用ならびに文献購入に充当する予定である。