研究課題/領域番号 |
17K03986
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研究機関 | 公益財団法人アジア成長研究所 |
研究代表者 |
岸本 千佳司 公益財団法人アジア成長研究所, 研究部, 准教授 (70334026)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 半導体産業 / 次世代産業 / 競争戦略 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、過去数年来実施してきた台湾半導体産業のファブレス-ファウンドリ分業モデルの研究を土台に、半導体産業をめぐる近年の環境変化を踏まえて、台湾の従来の競争戦略や技術能力の有効性と今後の変容、および半導体関連産業の新展開を検討することである。国としては、台湾に加え日本と中国にも注目し、また半導体産業だけでなくIoT等の応用製品産業にも視野を広げる。現地調査を重視する手法で、半導体産業を巡る環境変化(中国の台頭、微細化推進の限界直面、応用製品としてのIoT等次世代産業の発展、等)、およびこれ背景にした台湾と日本、中国の半導体・関連製品企業の競争戦略と能力構築に向けた取り組みを研究する。 H29年度は3年計画の初年で、主な実施内容は以下の2つである。①関連文献・資料の収集・分析を行う。②(主に台湾と日本で)企業・専門家等に若干のインタビュー調査を行う。 ①については、国内、台湾、中国で出版されている論文や書籍、産業年鑑、統計データを可能な限り収集、精査した。とりわけ、台湾や中国で刊行された中国語の文献・資料を入手することに注力した。また、半導体の応用分野としてIoTやAI、ロボット等の次世代産業、およびそれと密接に関連するインターネットやソフトウェア産業(および担い手のベンチャー企業)の動向も理解する必要があり、こうした分野の文献にも相当程度注目した。 ②については、台湾で1週間弱の現地調査を行い、半導体・電子企業、IoTやインターネット・ビジネス関連団体(産業政策に関与する政府機関も含む)、ベンチャー企業支援団体(IoT等次世代ビジネスはベンチャー企業が担うことが多いため)、現地研究者を含め数件の訪問調査を実施した。国内では、こうしたテーマに関する研究会への参加、および業界(半導体、ベンチャー、ロボット等)関係者への面談を数件行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクト初年度であるH29年度は、主に文献・資料収集・整理と台湾・国内での其々数件程度の面談調査を行うことが元々の計画であり、ほぼその通り実施できた。 また、H30年度以降に実施する予定の中国での現地調査(主に、上海およびその周辺エリアを想定)に向けて、上海の学術・研究機関(復旦大学等)の研究者とコネクションを開拓し、協力を得られるように備えを進めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も概ね計画通り推進していく。プロジェクト2年目のH30年度においては、主な実施計画内容として以下の2点がある。①引き続き関連文献・資料等の収集・分析を行う。②台湾と日本に加え、中国でも、企業・専門家等に其々数件程度のインタビュー調査を行う。 なお、近年、中国において、半導体・次世代産業(およびその担い手の一つであるベンチャー企業)に関する年鑑や統計資料、政府計画文書、研究論文、記事が大量に出版されており、これをフォローするだけでも相当の時間と労力を要すると予想される。本プロジェクトは、自身による現地調査(企業面談・視察等)を重視しているが、中国では外国人による視察や訪問調査が(国内や台湾ほど)自由に実施できない恐れもある。その場合は、むしろこうした公表された資料・文献を活用し、緻密に整理・分析することに重点をシフトし、現地調査は(実施可能な範囲で)ポイント絞って行うというスタンスに切り替える可能性もある。 また、半導体(特に設計開発)やその応用製品(IoT等)は、ベンチャー企業が一つの重要な担い手である。そのため実際は、ベンチャー企業やその支援団体・施設(アクセラレータ/インキュベータやハイテクパーク等)および政府当局によるベンチャー/イノベーション推進政策の調査研究を伴うことになる。半導体産業・企業に主に関心を持ちつつも、ベンチャー企業やその支援体制にも相当程度注目していくであろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
H29年度に次年度使用額(20万円強)が生じた理由は、同年度に実施した他の研究プロジェクトで、一部分テーマ的に重なるものがあり(アジア・日本における次世代産業およびベンチャー企業に関する研究)、その予算で実施した調査や資料収集が、本科研費プロジェクトにとっても利用可能だったことである。 H30年度においては、この次年度使用額を、主に物品費(書籍・資料購入、必要に応じてコンピュータ・周辺機器やソフトウェアの購入)に充てる計画である。
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