最終年度では、前年度までの研究成果を土台として、eコマースの商品購買履歴や映画配信サイトの視聴履歴データと深層学習を用いた推薦システムによる資源配分にも着手した。その内容は主に3つである。(i)異なる商品カテゴリ間の情報を融合した情報資源配分。ここでは、深層学習の一種である敵対的生成ネットワークと変分オートエンコーダを2つ結合したモデルであるVAE-GANネットワークを援用し、情報推薦を行うシステムを開発した。単一カテゴリによる推薦ではその情報配分の多様性が失われる傾向にあるが、その弱点を軽減できる可能性を示した。(ii)推薦配分の新規性を考慮した効率的アルゴリズムの提案。ここでは、消費者の嗜好を順序付けをモデル化するBayesian Personalized Ranking法(BPR)に関する新しいアルゴリズムを提唱した。従来では2段階推定が主であったBPRを2段階推定することなく推定する手法とそのメリットを示した。また、映画推薦などの実データの情報配分に対しての有用性を示した。(iii)顧客属性・購買履歴データと商品の特性データの深層学習での融合による高度な情報資源配分。ここでは、変分オートエンコーダを利用して消費者の購買履歴の特徴ベクトルと商品の情報の特徴ベクトルをそれぞれ抽出し、その特徴ベクトル同士を用いて情報推薦を行う手法を援用することで、顧客属性を用いなくても高度な情報推薦が可能である可能性を示した。いずれの研究課題においてもそれぞれのテーマに関する知見が得られており、それらは査読付き国際会議のプロシーディングスとして公開された。
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