研究課題/領域番号 |
17K03996
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
安藤 和代 千葉商科大学, サービス創造学部, 教授 (60409620)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ネガティブなクチコミ / 認知的評価理論 / サービスの失敗 / サービスリカバリー |
研究実績の概要 |
ネガティブなクチコミ研究を概観した結果、ネガティブなクチコミには、否定的な情報を拡散することや、組織や従業員への報復を目的とするものばかりではないことを確認した。自身におきた出来事に対する状況理解や感情安定化を目的として他者に語る。こうしたタイプのクチコミの場合とその他のタイプのクチコミの場合では、聞き手に及ぶ影響や、語り手と企業およびブランドとの関係に及ぶ影響に差が生じることが推察される。そこで、サービスの失敗を体験した消費者が発信するネガティブなクチコミのタイプを予測する枠組みを、「認知的評価理論」の考えを用いて設定することに取り組んでいる。加えて、初年度に行った調査データを用いて定量的な検討を進めており、これら作業を現在も継続して行っている。多くの先行研究で用いられているクリティカルインシデント法などの定性的な調査方法や、統計的分析の手法についての確認を行っている。1つめの研究取り組みである。 また、本研究に関連する研究テーマとして、「サービスの失敗」や「サービスリカバリー」や、近年多く取り組まれている「顧客の強い怒り(Customer Rage)」、「ネガティブ体験にまつわる顧客の負の感情」に関する研究をレビューすることにも取り組んだ。議論されている内容や問題意識を理解し、初年度に行った企業取材の結果と照らして、ネガティブなクチコミの原因となる「サービスの失敗」に対する理解を深めることに努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していなかった研究プロジェクトの立ち上げや、学部内の運営環境の変化により予定していなかった校務を担当したことなどにより、研究が遅れた。発表に至ってはいないが、データ分析や考察は進めており、2019年度以降で学会発表や論文発表につなげたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
1つ目は、復讐や警告を目的とするクチコミが語られるなど、ビジネスへの負のインパクトが大きなサービスの失敗のタイプを明らかにすることに取り組む。2018年度に取り組んだサービスの失敗の実態把握と、認知的評価理論を用いた考察、具体的には認知的評価の評価軸、感情と対処方略の関連について、先行研究の知見に基づき仮説を設定し、実証研究を行う。 次に、サービスの失敗の負の影響を調整する変数についての考察を行う。認知的評価には内的要因や外的状況が影響することが指摘されている。内的要因として個人特性(性別や文化的背景、パーソナリティ、価値観など)、能力(感情知能、情報処理能力など)、ブランドとの関係年齢、ロイヤルティがあげられている。外的状況として、製品やサービスのパフォーマンスや他者の存在などがあげられている。これら要因に注目し、影響の違いを説明する論理的枠組みを設定し、実証的な検証に取り組む。 さらに、ネガティブなクチコミの発信者と受信者の両者に与える影響についての考察も行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に実施予定であった調査が、研究の遅れから行えなかったため、2019年度以降に実施する。その費用が次年度使用額に加算され、金額が増加している。
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