本研究の目的は、ネガティブなクチコミの発信および影響力を説明する要因、およびメカニズムの解明にある。消費者の購買意思決定に際して重要視される傾向にあるサービスを関するネガティブなクチコミに焦点をあて、影響力を左右する要因やそのメカニズム、受け手だけでなく送り手にも注目し、両者の相互作用性の調整効果を明らかにすることも目指している。大きく2つの視点で研究を進めた。 1つ目は、発信動機に基づくネガティブなクチコミの分類、クチコミ発信者の感情の分類、そして両者の関連づけに取り組んだ。先行研究を概観し、明らかにされている知見の把握ならびに今後の研究課題の抽出を行った。その際、認知的評価理論を基盤として考察し、レビュー論文にまとめ発表した。加えて、そのプロセスにおいて、実態把握を目的とする消費者調査の実施や、消費者窓口を担う企業担当者のヒアリングを行った。 2つ目は、ネガティブなクチコミ発信を調整する要因を調べた。具体的には「状況要因」と「受け手と送り手の関係性」に注目した。状況要因として、サービス利用時に遭遇する複数の接点、サービスエンカウンターで利用者が知覚するサービス品質とクチコミ意向の関係を調べる研究を、共同で行った。さらにクチコミ発信に影響をもたらすサービスエンカウンター要因を理解し、適切なサービス開発につなげる方法について、製品分野の品質管理研究で発展し提唱されているQFD(品質機能展開)の枠組みを、サービス分野で用いることの有効性について考察した。レビュー論文にまとめ、共同で発表した。 加えて、送り手と受け手の関係性に注目し、両者の相互作用とネガティブ体験のクチコミ発信意向との関係について研究した。受け手の対象への態度や受け手との関係性がネガティブなクチコミの発信意向を調整すると仮定し、6件の調査を行い、概ね支持する結果を得た。昨年度の調査結果と合わせて論文化を進めた。
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