従来、消費者や顧客からの苦情や問い合わせ、クレーム、コンプレイントは、製造工場での製品の失敗の結果としての欠陥商品の発生にともない企業に寄せられるものであった。 しかし、多様なリスクの脅威と複雑性の増大する現代の日本のリスク社会では、企業不祥事や風評被害、ネット炎上などのブランドリスクが蔓延している。このような製造業者の企業不祥事の初期対応や事後対応などの「サービス・リカバリー」の失敗により、大きな損失を負った企業は数多く存在する。 本研究では、日本のサービス経済化と情報化の進展を背景に「消費者の権利意識」が向上し、SNSにおける「消費者問題」の発生と消費者の「ネガティブくちコミ(NWOM)」の情報的影響力に着目する。そして、消費者トラブルが複雑化・多様化する中、本研究では、製品の失敗とサービスの失敗によるサービス・リカバリーの不備により、企業が「モンスター・カスタマー」や「カスタマー・ハラスメント」に遭遇した際の対応と解決策、顧客との識別の重要性を検討することを目的とする。 第一に、サービス・リカバリー研究における製造業とサービス業の二面性の問題に着目した。とくに、本研究では、製品安全としての製造業のサービス・リカバリーについて、食品メーカーの企業不祥事の事例分析を行った。第二に、本研究では、サービス・リカバリーにおける価値共創として、「サービス・エンカウンター」からサービスの失敗によるリカバリー・プロセスまでの接点で発生することを企業の事例により分析した。第三に、本研究では、従来のサービス・リカバリーのマニュアル教育だけではなく、フロントラインの従業員に対する組織の分権化により、「従業員主導のサービス・リカバリー」における価値共創とリカバリー戦略の重要性を検討した。 これらの研究成果は、日本経営診断学会や日本消費経済学会などの学会誌、大学紀要に論文を投稿する予定である。
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