本研究の目的は、消費者がブランドに対して抱く愛着や心理的絆(Self-brand connection; SBC)は、消費者にどのような心理的便益をもたらすのか、購買意思決定にどのような影響を与えるのかについて明らかにすることである。先行研究では、SBCは、ブランドの持つイメージが、その顧客である消費者の自己概念(自分自身に関する認識)と一致しており、消費者がブランドと自分自身との間に人間に対するのと同じような深い絆を感じている状態と定義されている。あらゆる人間にとって、自分自身の価値を低く見積もることは苦痛を伴う。したがって、ブランドに対して高いSBCを知覚した場合、自己評価の低下を避けたいという動機づけから、自分自身と心理的に結びついたブランドに対しても、無意識に低い評価を回避しようと消費者は動機づけられる。このようにしてSBCは、ブランドの評価が低下することを防いで持続的なブランド購買に寄与するとともに、消費者個人にとっては、消費活動を通じた自己実現を助け、豊かな社会生活を提供する可能性を持つ。最終年度には、SBCの有効性を明らかにするために、これまでにも注目してきた消費者のマインドセット(具体的/抽象的)の調整効果に加えて、ブランドに関する周囲の評価がSBCと葛藤する状況での意思決定についても検討を行った。複数回のオンライン実験を行い、仮説を支持する結果を得た。論文の再投稿に加えて、最終年度の新しい実験結果についてはアメリカマーケティング学会コンファレンスの発表に応募した。
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