研究課題/領域番号 |
17K04005
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
久保 知一 中央大学, 商学部, 教授 (40376843)
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研究分担者 |
崔 容熏 同志社大学, 商学部, 教授 (70315836)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 流通チャネル / 延期 |
研究実績の概要 |
本年度は、流通チャネルを構成する流通業者(卸売業者と小売業者)の在庫形成の延期化と財務成果の関係について、財務データを用いた実証分析を行った。流通チャネルにおける流通様式は、延期-投機モデルによってこれまで分析されてきている。意思決定を遅くして実需に近づける方式を延期、逆に早くして見込みで意思決定する方式を投機と呼ぶ。現代の流通チャネルは延期型に変質してきていると考えられてきたが、延期にはそのために物流や情報システムなどの物的資産やそのための人的資産への投資が必要である。したがって、延期化によって逆に財務成果が低下することも考えられる。しかし、延期-投機の既存研究の多くは理論研究もしくは事例研究であったし、希少な実証研究もサーベイデータを用いたものであったため、流通業者の財務成果と延期化行動の関連性は実証的に明らかになってこなかった。そこで本研究では、日本の流通業者の財務データを用いて、延期化の尺度として経験的リーンインデックス (Empirical Leanness Index) を作成し、実証分析を行った。パネルデータを用いて内生性を加味した分析を行った結果、卸売業者については延期化が成果を高める一方で、小売業者についてはそのような関係は見られなかった。この結果は、小売業者は無制限な延期化に慎重となる必要があることを示唆している。研究の成果は11月に開催された国際学会にて報告され、現在、学術誌への投稿を目指して論文化の作業を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度はアーカイバルデータに基づくデータセット構築だけでなく、企業へのサーベイ調査によるデータ収集も行う予定であったが、大企業でリモートワークが進む状況にあって回収率の大幅な低下が見込まれたことから、調査を1年遅らせることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は昨年度に見送った企業へのサーベイ調査を1回行う予定である。調査対象となる大企業ではリモートワークが進展しており、従来型の紙媒体による調査票では十分な回答が集まらない恐れがあるため、依頼は紙で行う一方で、回収はより回答が容易なウェブ媒体にするなどの工夫をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は企業への大規模なサーベイ調査を行う予定であったが、大企業の現場がコロナ禍で混乱している中で調査を見送ったことが理由である。2021年度はリモートワークが定着している環境を踏まえて、回答が容易なウェブによる調査を実施して予算を執行する予定である。
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