研究実績の概要 |
近年の市場において,顧客満足度を高め,同一消費者の購買数や購買頻度を増やすリレーションシップマーケティングが注力されている.リレーションシップマーケティングにおいては,消費者に対する購買後のアフターサービスを含めた対応が重要であると認識されているが,近年では,特にサービスに不満足な消費者への適切な対応が購買後満足度を高め,繰り返し購買に繋がると考えられている. 消費者側についても,サービスに対する不満足の表明行動に変化が見られつつある.国民生活センターへの問い合わせのあった苦情件数が近年減少傾向にあるように,直接企業や第三者機関に訴える消費者は減少傾向にある.一方で,クチコミサイトやSNS上で口コミという方法で商品や企業に対する不満を表す消費者が増えている. インターネット上の口コミを行う消費者に注目した先行研究として,口コミが発信者自身の認知に与える影響(安藤,2015)や口コミ発信者に対して共感他者が与える影響(泉水,2015)についての報告がある.一方,そのような消費者に対するインターネット上での苦情対応として,口コミサイトに投稿された口コミに対して企業が返信する仕組みが存在する.口コミに対する企業の返信については,大沢ら(2010)による企業の返信を構成する内容に関する研究が行われているが,口コミサイトにおける企業の適切な返信の内容についてはまだ十分な研究の蓄積がなされていない. こうした背景から,本研究では,まず,不満を持った消費者によるネット上の悪い口コミ記載に対する適切な企業の返信について検討を行った.さらに,苦情行動については消費者属性の違いや商材の特性の違いによって苦情行動生起に影響があることが指摘されているため,動機以外の消費者属性および商材の特性の違いが返信の効果に与える影響を精査し,変数同士の関係性について考察を加えた.
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