研究課題/領域番号 |
17K04010
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
諸上 茂光 法政大学, 社会学部, 准教授 (60422200)
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研究分担者 |
東海 詩帆 横浜商科大学, 商学部, 准教授 (20736459)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 購買後対応 / e口コミ / 閲覧者の心理効果 / 文脈効果 / 購買意思決定 |
研究実績の概要 |
研究課題3年目の本年度は,ここまでに得られた知見を元にインターネット上における悪い口コミとそれに対する企業返信の効果について,投稿者,企業,閲読する他の購買検討者の三者間のそれぞれの関係性について議論を進め,モデル化を行った. まず,企業と投稿者の関係については,悪い口コミ投稿者にとって,企業からの共感性を含んだ返信が与える心理的影響を検証した.特に,消費者の性別と商材の種類という苦情生起に関わる要因がどのように影響するかについて注目した.その結果,商材によって共感性を含んだ返信の効果は異なること,消費者の性別の違いによって心理的評価の高さが異なることが確認された. 一方で,これらのやり取りをネット上で閲覧した他の購買検討者がこの両者に対してそれぞれどのような評価を下し,どのような心理的影響を受けるのかについても検証を進めた.このとき,特に謝罪場面の観察者に関する知見より責任判断バイアスに着目し,悪い口コミの発信者や企業に対して購買検討者が知覚する類似性が購買意図に与える影響を検証した.その結果,第三者である購買検討者は悪い口コミの発信者と企業のどちらかに偏った判断をするわけではないこと,企業の評価は悪い口コミによって負の影響を受けるものの企業が誠実な返信を行うことで閲覧者の評価は高くなることが確認された.また悪い口コミと企業の返信を閲覧する購買検討者の心理モデルの妥当性を確認することができた.一方で,1つの悪い口コミを閲覧する場面に着目したときに,複数の投稿者による口コミとそれに対する企業の返信を連続的に閲覧する場面においてそれらのやり取りに対する評価が互いに与える影響を検証することや,良い口コミを閲覧する際にも同様の心理効果が生じるのかについて,さらに検証する必要性があることを指摘した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究計画に沿い,国内学会発表4報を行い,査読論文3編の掲載および1編の投稿(査読中)を行なっている.また,著書の分担執筆も行なっている. 一部,実証実験の実施に伴い,実験デザインの改良が必要になったり,追加で調査を行う必要が出た部分もあるが,本課題が当初計画していた多くの研究成果が刊行という形で結実し始めていることから,おおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
実証実験の一部に精緻化が必要な部分が見つかり,追加実験を行うことを計画している, また,成果の一部については査読が続いており,査読者からの指摘などに基づいて,実証方法や分析,議論に改良を加えていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実証実験の一部に精緻化が必要な部分が見つかり,追加実験を今年度内に終えることができておらず,また,成果の一部の査読に予定以上の時間がかかり,成果公表の際に必要な掲載料などが今年度内に執行できないため研究期間の延長を申請し,承認されている. そのため,次年度は,必要な追加実験を行うことを計画している.また,成果の一部については査読でのやり取りが続いており,査読者からの指摘などに基づいて,実証方法や分析に改良を加えていくことを予定しており,次年度使用額は実験協力者への謝礼や実験消耗品への支払い,論文掲載料に充当する予定である.
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