研究課題/領域番号 |
17K04011
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
渡部 和雄 東京都市大学, 知識工学部, 教授 (90244532)
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研究分担者 |
岩崎 邦彦 静岡県立大学, 経営情報学部, 教授 (40315213)
梅原 英一 東京都市大学, メディア情報学部, 教授 (00645426)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電子書籍サービス / 利用促進方策 / 消費者行動モデル / 電子図書館 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
2019年11月に全国の消費者1000人に対して,紙書籍および電子書籍に対する意識と行動について調査し,分析した.その結果,次のことが判明した.①50歳代,60歳代は紙のみ利用者が紙と電子を併用する電子出版物併用者(以下,併用者)より多い一方で,20歳代~40歳代は併用者が紙のみ利用者より多い.②20歳代,30歳代では3~4割が紙出版物も電子出版物も週1日未満の利用に止まる.③紙のみ利用者は紙出版物の満足度が高い.④併用者は電子出版物の長所(場所を取らない,何千冊も持ち運べる,買いやすいなど)を好意的に見ている.一方,紙のみ利用者は電子出版物の短所(目が疲れやすい,コンテンツが少ないなど)を厳しく見ている.⑤消費者は電子出版物の低価格化,品揃えの充実,サービスの継続などを求めている.
電子図書館の研究では,第1に図書館における電子書籍と紙書籍のメリット・デメリットを比較した.東京都市大学横浜キャンパス図書館を事例に,電子書籍と図書館とのギャップの要因をDEMO を用いて分析した.その結果、図書館業務における電子書籍と紙書籍の業務上の相違が明らかになった.そこで電子書籍と紙書籍のTCO(Total Cost of Ownership)の比較を行った結果,電子書籍は紙書籍よりもTCO を抑えることができると言える.第2に図書館の電子化を推進するためには,図書館組織のIT活用能力の向上が必要であると考えられる.そこで東京都市大学総合情報システム部を事例に,中小組織向けIT-CMFを用いてIT活用能力の改善提案を行った.
なお,研究代表者,研究分担者らによる下記論文は,日本印刷学会の2019年最優秀論文賞を受賞した. 渡部和雄,梅原英一,岩崎邦彦「紙出版物と紙・電子出版物利用者の意識や行動の定量分析」日本印刷学会誌,Vol.56, No.3, pp.146-152, 2019
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年10月の台風19号により,本学世田谷キャンパスの建物の地下が浸水にあった.特に大学図書館に大きな浸水被害があり,図書や文献検索サービスなどが長期間利用できなくなった.また,研究室にもしばらく立ち入りができなくなった.そのため,予定通りに研究を進めることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
消費者の電子出版物や紙出版物に対する意識の調査を継続的に行い,結果を分析する.そして,従来行ってきた調査結果と時系列で比較し,推移を調べ,今後の方向を予測する.また,紙出版物利用頻度,電子出版物利用頻度と消費者の意識との因果関係を分析し,構造方程式モデリングで表現したい.最終的にこれらの研究成果をもとに,電子出版物および紙出版物の特徴を踏まえて,電子出版物サービスの利用促進策を提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年10月の台風19号による本学世田谷キャンパスにおける浸水被害が大きく,研究室や図書館への立ち入りがしばらく制限された.そのため,期待通りに研究が進まず,予定した消費者調査ができなかったため. 今年度は,昨年度できなかった電子出版物や紙出版物に対する消費者の意識調査と結果の分析を行う.
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