研究実績の概要 |
新たに電子出版物および紙出版物に対する意識と行動について,消費者調査を行った.サンプル数は500である.消費者を紙出版物と電子出版物の両者を利用している者,主に紙出版物を利用している者とで比較した.特に自由に記述できる回答内容について,今まで行っていなかったMeCabによる字句解析を行い,分析した.その結果,紙出版物利用者は紙出版物を所有し,手元に残ること,コレクションすること,読み返すことを重視していることがわかった.一方,電子出版物利用者は簡単で読みやすいことを重視していることがわかった. 2021年2月に,「紙書籍と電子書籍の“使い分け”に関する消費者分析」と題して,日本印刷学会において講演した.紙書籍は読みやすさ,馴染みやすさ,装丁や紙質,レイアウトなどで個性を出せるなどの長所がある.一方,電子書籍は持ち運びが容易,価格が比較的抑えられているなどの長所がある.読者が紙書籍と電子書籍をどのように異なる方法で使用するかについて調査を行った.それぞれの長所をいかに活かしながら利用していくかが今後両者が共存する鍵となろう. また,電子図書館のあり方についても検討し,発表した.公共図書館においては電子書籍の普及は低迷状態である.東京都市大学横浜キャンパスの図書館でも電子書籍はまだ200種類であり浸透しているとは言えない.そこで,横浜キャンパス図書館を事例に,電子書籍と紙書籍の隠れた要因をDEMOで分析した.そして,電子書籍と紙書籍のTCOを比較した.その結果,平均的には紙書籍のTCOが電子書籍を上回っていた.ただし、旅行ガイドブックのような価格差があまり開いていないものもあった.書籍ごとに価格差を調べて判断してゆくことが重要である.
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