本研究のテーマは、企業間適応のパフォーマンス効果に関する実証研究である。本研究では、そのテーマに対して、企業間のコーディネーションの問題と企業間の資源コンフィギュレーションの問題という2つの次元からのアプローチを行なっている。本年度は最終年度であり、昨年度に行なったコーディネーション統合の関係パフォーマンスへの効果についての分析結果の解釈、それを受けて、資源コンフィギュレーションのパフォーマンス効果に関する新たなリサーチ・モデルの開発、そしてその仮説の検証を行なった。 昨年度の研究において以下のような分析結果を得ている。まず、企業間のコーディネーション統合は流通チャネルにおける関係パフォーマンスに正の関係をもつ。また、コーディネーション統合が環境の不確実性 (環境要因) の関係パフォーマンスへの負の影響を抑制する効果をもつこと、そして製品の差別性 (マーケティング戦略要因) が高い場合に流通チャネルにおけるコーディネーション統合を高めることによって関係パフォーマンスを高めることが確認された。これらの分析結果は、コーディネーション統合のパフォーマンス効果に対して環境要因およびマーケティング戦略要因が関係していることを示唆している。さらに、コーディネーション統合と資源要因との関係に関する仮説も検証しており、企業間の資源コンフィギュレーションのパフォーマンス効果に関する本年度の研究に重要な示唆も得た。 本年度に行なった企業間の資源コンフィギュレーションのパフォーマンス効果に関する研究では、知識資源であるマーケティング能力と活用(exploitation)能力に焦点を当て、それらの関係パフォーマンスへ効果について検証し、それらが正のパフォーマンス効果をもつことを確認した。また、活用能力の不確実性抑制効果やマーケティング能力と関係特殊的資源との交互効果についても確認した。
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