新型コロナウィルス感染拡大の影響により令和二年度が最終年度となった。この延長により、2020年6月にオンライン開催された国際学術会議Ethicomp2020で2件の報告を行うことができた。一つ(Perceived Risk and Desired Protection: Towards Comprehensive Understanding of Data Sensitivity)は個人情報の企業による利活用が生み出す知覚リスクや個人情報保護の要求について定量的な分析を思ったものであり、リスク知覚や保護の要求水準の分布的特性を論じるとともにこれらに影響を及ぼす要因について検討を行った。もう一つ(The Ethical Aspects of a "Psychokinesis Machine": An Experimental Survey on the Use of a Brain-Machine Interface)は、高度な情報技術が人間の行動を代替する際の倫理的な問題について論じたものであり、近年AI等を通じて行われている自動化された消費者情報活用の倫理的基盤を整える多くの示唆をもたらした。 研究期間全体を通じて得られた成果を振り返ると、以下の3点にまとめることができる。一つは、マーケティング・リサーチによる消費者情報収集が近年のICTの発達を受けてより自動化、正確化、継続化しているとともにそうした情報収集に同意せざるを得ない取引形態となりつつ点を明らかにした点である。第二に、そうした半強制的な同意には消費者側の不本意さが内在する傾向がある点を概念化した点である。最後に、こうした不本意さを知覚リスクや保護要求水準といった点から定量的に考察できたという点である。これらの発見は取引条件としての消費者情報収集の倫理的問題を研究する際の基盤となりうると考えられる。
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