研究課題/領域番号 |
17K04019
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
岸谷 和広 関西大学, 商学部, 教授 (40330170)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ソーシャルメディア / カスタマージャーニー |
研究実績の概要 |
今年度は、ソーシャルメディアにおいて特徴的な購買行動を説明する理論的枠組みである、マッキンゼー社が提唱したCustomer Journeyとそれを応用した先行研究を検討した。Customer Journeyは、研究者だけでなく、実務家にも注目されている概念である。簡単に言えば、ソーシャルメディアが登場する前では、購買対象の候補となるブランド数は、当初多数存在し、購買地点に近づくにつれて候補ブランドがスクリーニングされることで段階的に絞られる購買意思決定を行っていたのに対して、ソーシャルメディアを利用した現代の購買では、消費者が興味が生じた時点で、SNSにあるブランドのアカウントをフォローすることが可能であるため比較対象となるブランドは以前に比べれば限定される。最も極端な場合は、フォローしたブランドのみを購買対象とするロイヤリティループが存在する。しかしながら、購買段階に関わらず、比較対象となるブランドが追加されることもありうる。このプロセスは、ソーシャルメディアが登場する前の漏斗プロセスとは明らかに異なるといえる。 このようなCustomer Journeyが指摘する購買行動を先行研究の中で位置づけし、同時に、学生サンプルを対象とした購買行動に関するヒアリング調査を行なった。当初、Grounded theoryを用いた絶えざる比較を基礎とする定性的な調査を行う予定であったが、分析のサンプル数は比較できるほどの数に達していない。同時に、ソーシャルメディアを運営する会社にヒアリング調査を行うことで、Customer Journeyのマーケティング利用の現状の把握に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
消費者ヒアリングに関しては、当初予定していたより進捗が遅れてはいるが、理論的枠組みの整理に関しては、想定以上に進んでいる。また、SNSの運用管理を行っている企業対するヒアリング機会も存在したために、従来の予定を前倒しして、ソーシャルメディアに関する企業のマーケティング利用に関する現状を把握することができた。それらを考慮すると、全体の進捗としては、概ね順調ということができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方向性としては、消費者ヒアリングの拡充に努めることである。サンプルを様々な特徴(性別、年齢、SNS利用頻度、オンライン購買頻度)をカバーするように充足する。その結果を踏まえて、具体的な仮説を構築することになる。同時に、仮説を検証する調査方法に関する知識を習得し、適切な方法論を選択する。調査手法としては、被験者に対して提示する刺激物を統制することで、因果関係を検証する消費者実験方法、もしくは、自己報告を基礎とする質問紙調査が挙げられる。それぞれの長所と短所を鑑みながら、検証すべき仮説を参照し適切な方法を選択する。実験方法であれば、刺激物の作成に時間を費やすことになるので、質問紙調査に比べれば、進捗状況がやや遅れることになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、消費者ヒアリング調査を外部委託することで、その謝金の支出を予定していたが、SNSの利用頻度が高い学生サンプルから順次を行うように変更し、サンプルの学生もボランティアで参加してもらったため、支出が生じなかった。また、調査手法の習得や研究動向の把握のために海外旅費を計上していたが、日本で広告の国際学会が行われたため、それに参加することで目的を達成することができた。 次年度は、消費者のヒアリングやプレテストの外部委託費などの謝金、調査方法として消費者実験を採用するのであれば、提示する刺激物を作成するための謝金、国際共同研究を模索するための海外渡航として海外旅費の支出を計画している。
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