研究実績の概要 |
本研究の目的は、消費者参加型の共創活動から派生する、社会的価値の可能性について明らかにすることである。平成30年度は、前年度に着手したAppleの顧客参加型コミュニティの調査を継続し、同コミュニティ参加者(n=61)に質問票調査を実施した。その結果、前年度の定性的調査で得られた結果(Appleではリードユーザーをコミュニティに集めて、イノベーションを創発し、教育の質の向上という社会的価値を創出)が定量的に実証された。 次に、2つ目の共創事例として、ハンドメイド作家のコミュニティを取り上げることにした。C to Cビジネスのプラットフォームの発展により、同市場は9,000億円規模にまで拡大している。個人の遊休資産(能力や時間)を有効活用するひとつの有効な手立てとして確立されつつあり、その経済的・非経済的価値について検証することは、本研究に有用な示唆を与えるものであると判断された。コミュニティ運営者への聞き取り調査から、参加者らがC to Cビジネスを通じて、売上だけでなく他者からの認証や、やりがいなどの便益を得ていることが示唆された。それらは、ポジティブ心理学で提示されたウェルビーイングを構成する5つの要素(Positive emotion, Engagement, Relationships, Meaning, Accomplishment:PERMA)と近似するものであった。そこで、本研究ではウェルビーイングの尺度を用いて、C to Cビジネス参画者が享受する非経済的価値を測定することにした。 ハンドメイド作家(n=185)と、18歳から74歳の男女(n=1,000)を対象に質問票調査を実施し、比較分析を行った。その結果、ハンドメイド作家は有意にウェルビーイングの水準が高いことが示され、共創活動から、経済的価値のみならず社会的価値が創出されていることが示された。
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