研究課題/領域番号 |
17K04025
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
白 貞壬 流通科学大学, 商学部, 准教授 (60400074)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グローバル・イノベーション / 現地新生小売企業 / 先端国際小売企業 / 小売国際化 / 競争的相互作用 / HM業態 / CVS業態 / ホームファニシング業態 |
研究実績の概要 |
新興国市場がグローバルマーケットになってから20数年経っている今、先端国際小売企業との熾烈な競争を勝ち抜いて国内市場での基盤を強固なものにした現地新生小売企業が今度は海外進出を推し進めるようになった。しかも先端国際小売企業が長年かけて進めていた国際化を、現地新生小売企業は猛烈的な勢いでかつ比較的短期間で果たしていることで、従来の先端国際小売企業との異なる国際化行動見を見せているのではないか、という立場から研究を進めていた。 この見方に立てば、先端国際小売企業が進出先市場へ小売業態を持ち込むだけでなく、現地小売企業は先端国際小売企業との相互作用の結果として新しい小売業態を生み出すことになるのであり、さらに今度はその新しい業態をもって新しい市場に進出するようになる。こうして小売国際化をグローバル・イノベーションが引き起こされるプロセスそのものとして捉える「小売国際化におけるグローバル・イノベーションの概念」が必要になる。 以上の問題意識から、現地新生小売企業が先端国際小売企業へと移行していく過程について分析することを課題とし、その分析対象として最も代表的な小売業態である食料品中心の総合型量販店業態、CVS業態、そしてホームファニシング・ストア業態を取り上げ、課題の解明に取り組んだ。その成果が単著『小売業のグローバル・イノベーション:競争的相互作用と創造的適応』の出版につながった。 本研究では、小売業態の循環型国際移転メカニズムによって、新しい小売業態が次々に創り出されていく経緯が明らかにされた。このようなグローバル・イノベーション・サイクルのなかで、先端国際小売企業を媒介に現地新生小売企業は国際小売企業へと成長していく。結局、各主体は国際競争力をつけるために、さらなる革新性をもって市場環境や消費者ニーズのギャップを埋めるグローバル・イノベーションを推し進めていくことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の狙いは、従来の先端国際小売企業との異なる現地新生小売企業の国際化行動と、先端国際小売企業が持ち込んできた小売業態を競争的相互作用プロセスのなかでどのように変容・発展していくのかを明らかにすることであった。 この研究に取り組んで2年目に、その成果を単著としてある程度まとめられた。新興国市場の現地小売企業を進出される立場のみではなく、進出する立場まで分析範囲を拡大したことは、本研究が目指していたゴールにほぼ到達している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究に取り組んで2年目に、その成果を単著としてある程度まとめられたものの、後発の現地新生小売企業の国際化行動における事態と議論の進展については引き続きフォローする必要がある。すでに提示された「グローバル・イノベーション」という概念の精緻化とともに、事例の探索とより詳細な分析に取り組むことが今後の課題になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、最終年度に単著の執筆を予定しており、それまでに必要な海外現地調査や海外学会発表のための諸経費を計上していたが、単著の執筆を今年度にすることに途中計画を修正した。したがって、今年度は執筆にほとんどの時間が割り当てられていたために、海外現地調査および海外学会発表に参加する回数が少なかった。 次年度は、取り残された課題に取り組むために、海外現地調査や国内外の学会参加費としての旅費を計上する。また、現在準備中の分担執筆の献本および英語論文の英文校正費にも支出予定である。
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