研究課題/領域番号 |
17K04026
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
森藤 ちひろ 流通科学大学, 人間社会学部, 准教授 (10529580)
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研究分担者 |
山本 昭二 関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (80220466)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 家族の意思決定 / 家族アイデンティティ / 家事労働 / 意思決定プロセス |
研究実績の概要 |
家族の意思決定は、構成員間の関係や役割分担などを分析対象とする集団的意思決定の1つである。家族の意思決定プロセスでは、家族構成員の価値意識が影響し合い、家族という1つの集団の価値意識の形成と共有がなされ、それらが家族の意思決定に影響を与えている。価値観やライフスタイルの多様化や家族形態の多様化に伴い、家族の意思決定プロセスはそれぞれの家族で差異があると考えられる。 近年、非同居だが日常的に繋がりを持つ家族と消費を共に行う消費者が増加している。非同居家族との影響関係も家族の意思決定に影響を与えるため、家族の意思決定プロセスは複雑化していると考えられる。 インターネットの普及により、個人だけでなく家族の購買行動も変化した。IoTに関連した商品がこれから市場に増えることが予想され、家庭内における使用行動もこれから変化していくと推測される。インターネットは消費者の情報探索・購買・使用・廃棄まで広範囲に関わることから、家族の意思決定を議論する際、家族構成員のICTに対する態度やICTリテラシーと家族の意思決定の関係について理解しておく必要がある。 本研究は、(1) 消費者のICT に対する態度・ICT リテラシー (2)家族形態 (3)価値観 を調査し、ICT の利活用が進む現代における家族の意思決定の構造の類型化と意思決定プロセスを明らかにすることを目的としている。現代の日本の家庭内での役割意識の変化を捉え、家族構成員の価値意識や家族アイデンティティが家庭の意思決定の構造にどのような影響を与えているのかを明らかにする。非同居家族も含めた日常的なつながりのある家族を研究対象として、家族で共用する商品に対する消費者の情報探索・購買・使用・廃棄行動と、それらの家族の意思決定に与える影響を調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、消費者行動研究を中心に、経営学・社会学・心理学・情報学分野の家族の意思決定に関する研究、家族の価値意識、家族アイデンティティ、性役割に関係する文献レビューを行った。また、家庭内での夫婦の家事活動の分担状況を可視化したデータを用いて、①家事活動は家庭内でどのように分類され、どのように分担されているのか、②家事活動の分担の傾向から家庭はどのように分類できるのか、について分析を行った。分析の結果から、以下に示す家事タスクの3分類と分担状況による家庭の3分類の仮説が抽出された。 家事タスクは、妻の分担率が高いタスク、夫の分担率が高いタスク、夫婦での協働率が高いタスクの3つに分類することができると考えられる。3つに分類されたタスク・グループ内のタスクには性質の共通点が見られた。妻の分担率の高いタスクは、連続性があり、本業の前後に行われる準備・後始末を含めたタスクであり、実施段階において判断や考慮を伴い、経験によってスキルが高まるような特徴があった。一方、夫の分担率の高いタスクは、ハードウエアに関連性が高いもの、家事のスキルを問わずタスクの実施中に判断や考慮を必要としないもの、他のタスクと関連性が少なく単独で完了するものなどが多かった。協働率の高いタスクは、短時間で終了するもの、発生する時期が未定のもの、子供と一緒に行うものなどが含まれていた。また、子供に関連する家事タスクの多くは妻が担当していることも分かった。 分担状況による家族の分類は3群に分類することができると考えられる。1つ目は妻主動型(妻が家事の大半を行い夫の分担が少ない群)、2つ目は妻優位型(妻の分担率は高いが夫も家事に参画している群)、3つ目は協働型(協働率が最も高く夫婦間での分担が進んでいる群)である。この分類の背景には、家族の価値意識、家族のアイデンティティの影響があることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は平成29年度に抽出した家事タスクの3分類と分担状況による家庭の3分類の仮説を定性・定量研究で検証を行う。その後、分担状況による家庭の分類の背景にある各構成員の価値観と家族アイデンティティ、家族のつながり方について研究を深める。 また、平成29年度に使用した家事タスク・データを用いて、それぞれの家事タスクが家族の意思決定プロセスのどの段階と関係しているかを整理し、ICTのリテラシーや受容性の影響を検討する。それらの結果を基に、意思決定に対する家族構成員の影響関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度にはweb調査を実施を予定し、その調査費用を計上していたが、調査は費用を抑えて実施することができたため、次年度に実施を予定している定性・定量調査に費用を充てることとした。
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