研究課題/領域番号 |
17K04034
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
櫻田 譲 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (10335763)
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研究分担者 |
大沼 宏 中央大学, 商学部, 教授 (00292079)
大澤 弘幸 新潟経営大学, 経営情報学部, 教授 (30468962)
加藤 惠吉 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (70353240)
柳田 具孝 東京理科大学, 経営学部経営学科, 講師 (40876249)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガバナンス / 傾向スコアマッチング / PSM / 研究開発減税 / 大型小売店 / 道の駅 / 租税負担率 / IFRS |
研究実績の概要 |
令和2年度の研究代表者による研究成果は申請課題に直接的に関係する成果1つと間接的に関係する成果2つに分類される。 直接的な成果として研究開発税制に関する論文執筆であり、平成29年度のサービス研究開発減税の採用についてサービス業と情報通信業に注目し、租税負担率の多寡が研究開発投資額に影響を及ぼすかを検証した結果、影響がないとの結論を得ている。この結果の含意とは租税負担削減のために研究開発減税を選択する動機は無いということである。 また間接的な成果2つのうち1つ目の研究成果として「自治体統計と道の駅設置並びに大型小売店出店の関係」を執筆している。大型小売店の出店は地方における零細な商圏を独占する可能性が高いために迷惑施設と考えられる向きもある。この様な施設の立地という企業行動がいかなる背景から行われるのかを観察したが、立地を決定する企業のガバナンス要素に対する検討が欠如しているため、本研究課題名を踏まえ、間接的な成果として報告した。 3つ目の研究成果としては傾向スコアマッチング(以下PSMと略称)による分析手法の習得を経て、その活用に成功し、成果を導出した点である。本研究代表者はPSMによる検証によって2つの成果を得ることが出来た。当該2件の成果とは厳密には公開時期が令和3年度に属するために翌年の成果ではあるが、その構想と検証、そして執筆の時間の大半が令和2年度において行われたため、ここで成果として記す。なお、その概要については「7.現在までの進捗状況」において簡単に言及してあるので以下において参照されたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの感染拡大により研究の進捗が一部で遅れた部分はあるが、リモートによる打ち合わせや研究会、学会への参加によって十分ではないものの大幅な進捗の遅延は避けられたと考えている。 また厳密には次年度の成果となるが、本年度において検討が試みられた2つの成果について以下の通り簡潔に触れておく。 ① 櫻田譲稿「(仮題)大型商業施設の立地と自治体財政の関係」『公会計研究』22巻1号掲載予定、掲載頁未定 ② 黄今書・櫻田譲稿「わが国IFRS適用企業の利益に関する研究」2021年4月、北海道大学大学院経済学研究院、Discussion Paper, Series B,No.193,1-11. 上記論文①については本報告書作成時(令和3年4月24日)において査読の最終段階に至っており、査読者から掲載許可を得ている。論文概要は大型小売店が立地する北海道内の自治体を処置群とする一方で、立地をみない自治体を対照群と設定しPSMを試みた。分析の結果、老年人口指数と1次産業就業者比率が同じでも大型小売店が立地する自治体では、それを立地しない自治体に比し財政力指数などが優越するとの統計的に有意な結果を得ている。この検証結果の含意とは、同じ老齢化が進むとしても大型小売店が立地する自治体では財政が安定するとの知見を得たことである。 上記論文②についてはIFRSがのれんや研究開発費の会計処理が国内基準と異なることにより、利益増加を目的として企業が適用を判断するとの仮説をPSMにて検証した。分析の結果はIFRS適用企業と非適用企業の間の当期純利益の差を比較したが、有意な差を検出していない。このことからIFRS適用は利益に影響を及ぼさないと結論した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度中に研究成果を単著として上梓する計画がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大による研究進捗の一部遅れが理由である。
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