本研究はBSC(Balanced Scorecard)における視点間の因果関係を示す非財務指標を中小企業において見出していこうとする研究である。BSCの非財務指標についてインタビュー等で実際に特定できたとしても、多くの場合、その指標について得られる情報は量的に十分なものではない。本研究では、非財務指標の有効性を分析するためにBayesianアプローチを用いる点に特徴がある。令和元年は研究代表者の病気により研究を中断し、令和2年についてもコロナの流行により教育業務に多くの時間を取られ、本研究について十分な時間を確保することができなかった。令和3年については、これまでの研究の遅れを取り戻すべく研究に取り組んだ。 令和3年度については、BSCを導入している企業を2度訪問し、実施状況とそこで用いられている費用か指標について調査を行った。その結果、分析対象となりうる指標の候補を複数見出すことができた。Bayesianアプローチに基づく分析モデルについては、さらに精緻化を進め、事前分布として二項分布またはポアソン分布を仮定し、これを事前分布としてMCMC(Markov chain Monte Carlo methods)でシミュレーションを行い事後分布のパラメータを推定するという方法を開発した。しかし、この方法を利用するためには、分析対象とする非財務指標について追加調査が必要であり、現時点においてこのモデルを用いた分析は行われていない。しかし、必要な情報を入手すれば、すぐに分析へと進める状態まできている。また、今年度は最終年度なので、今後の研究への利用を考え、これまでの研究データを整理することができた。共同研究者については、当初の予定通り、基礎的な研究を進めており、令和3年度については業績評価指標の研究を学会で報告することができた。
|