研究実績の概要 |
本研究の目的は「現場改善会計論」の体系的完成である。グローバル競争に対応して日本企業の競争力の源泉である「生産現場の組織能力」,中でも「擦り合わせて作り込む現場の競争力」(藤本2003, p.109)を進化させる必要がある。そのような組織能力が具現化するのが生産現場での絶ゆまぬ改善である。 現場改善会計(以下,GKC)はこれらの改善効果を金額的に測定可能にし,理論的に体系化することを目指してきた。初年度であった平成29年度には生産能力展開図の概念整理および図式化と,それらの知見について海外の研究者との基本概念に関する意見交換を行った。2年目である平成30年度にはGKCの理論化をさらに進め,生産能力展開図に沿って実際に金額計算する際の計算ロジックをほぼ構築し,成果の一部は書籍「ものづくりの生産性革命」の1章として執筆された。 また,国内研究者との共同研究・論文公表への参加および,国外研究者との知見交換として12th New Zealand Management Accounting Conferenceで成果報告を行った。 最終年度である令和元年度には、計算構造について継続研究を行い、これまでの研究成果を体系化して学会報告を行った。成果論文は令和2年度に投稿されており、令和3年度現在、査読が進行中である。また、複数の製造企業との共同研究も予定通り進展してきた。ただし、2020年3月以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響で一部研究会が令和3年度に延期された。令和3年度においてもコロナ禍の影響は大きく、研究成果の書籍化のための打合せや、より実践的な応用研究に向けた実務家との連携などのほとんどが遠隔(オンライン)で開催せざるを得なかった。その中で、コロナ禍が比較的落ち着いていた10月から11月にかけて、対面での研究会および製造工場の訪問を実施できた。
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