研究課題/領域番号 |
17K04040
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
中野 誠 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (00275017)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 集約利益 / マクロ実証会計 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はミクロレベル(個別企業)の会計情報を集約(aggregate)して作成したマクロレベルの会計利益情報を用いて、マクロ経済指標(GDP、設備投資等)の将来予測を実証的に行うことにある。マクロ会計情報とは、全上場企業の営業利益総額あるいはその変化分等が、その代表的な尺度である。日本のデータを用いた研究からスタートし、次いで、国際的な比較研究に進む計画を立てた。 今年度の主たる研究実績としては、次の2点を挙げることができる。第1に研究書として、『マクロとミクロの実証会計』(中央経済社)を出版することができた。日本のデータを用いたマクロ実証会計研究としては、初の研究書である。 第2に日本会計研究学会・関東部会の統一論題において、「国際マクロへの会計研究領域の拡張」という演題で研究報告を実施した。この報告においては、世界22か国の会計データとマクロ経済データを用いた国際比較研究を実施した。このことはいくつかの研究上の利点をもたらした。第1の利点は外的妥当性・一般性の確保である。先行研究は、米国および日本のみを扱っている。米国と日本以外の世界の国々において、集約利益率がマクロ経済指標の予測に役立つのか否かに関しては何ら証拠が存在しない。資本主義国家の中でも、米国も日本も典型的な国家とはいえず、例外的な存在と位置付けることも可能である。グローバルデータを用いた国際的な研究を遂行することで、この点の解明が進捗した。第2の利点は、サンプルサイズが拡大することで、状況別の分析を実施することが可能となった。例えば、世界金融危機時と平時とに分割したり、先進国と新興国とに分割することで、集約利益情報がどのような状況下で有用なのかを解析できる可能性が出てきた。サンプルサイズが小さい場合には困難な分析が、グローバルデータの活用によって可能になりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下に述べる2つの理由から、当初の計画以上に進展することとなった。第1に、当初は2018年度に予定していた研究書『マクロとミクロの実証会計』の出版を、2017年度に前倒しすることができた。これは、当初から立てていた仮説を支持する実証結果を得られた点が大きい。第2に、日本会計研究学会からの報告依頼があったこともあって、分析作業に拍車がかかり、国際比較に早めに着手することができた点を挙げることができる。
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今後の研究の推進方策 |
日米の先行研究は、集約利益がGDP成長のシグナルとして機能すると論じている。GDP成長率の将来予測における有用性を集約利益が有するのは、国内の企業業績の改善(悪化)が、その後多くの企業の追加的な事業展開や投資、雇用、給与、消費などの増加(減少)を導くと考えられるためである。しかしながら、先行研究では、なぜ両者の間には正の関係が観察されるのか、というメカニズムや経路については十分に分析されてこなかった。例えば、先行研究は、企業利益はGDPの構成要素であり、他のGDPの構成要素とも相関していることから、企業全体で利益が増加することが経済成長につながると論じている。しかしそれらは、実際に企業利益とGDPの各構成要素との間に強い正の関係が観察されるかどうかは分析していない。 アベノミクスでは、好業績企業が積極的に投資を行い、また賃金を上昇させることで消費の拡大につながることが期待されている。今後の研究では、国内企業の業績改善が実際にその後の国内経済の成長を導くかどうか、また、その後の経済成長を導くのは「消費経路」なのか「投資経路」なのかについて、日本のデータを用いて分析する。そして、その後に、上記の分析枠組みを国際比較研究にまで進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
価格低下などの理由により、当初計画していて金額よりも、物品費ならびに旅費が少なく済んだことから、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、平成30年度助成金とあわせて物品費ならびに旅費に使用する予定である。
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